ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
小人
Dvergar
大地や岩に住む者たち。巨人ユミルの肉のなかでうじ虫のように生じ、神々の定めで人の知恵と姿を得たという。神々の宝や縛め、呪われた黄金や剣など、多くの品を作る。
小人の起こり
『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」によれば、神々は高座に着いて裁きをしたとき、小人たちが土のなかや地の下で、肉のなかのうじ虫のように生じたことを思い起こした。小人はまずユミルの肉のなかで形と命を得てうじ虫となったが、神々の定めによって人の知恵と人の姿を得た。それでも小人は大地と岩のなかに住む。最初の小人はモートソグニル、二番目はドゥリンだったという。『古エッダ』の「巫女の予言」には、小人たちの名を長く並べた節がある。
神々がユミルの頭蓋から天を作ったときには、その四隅の下に東・西・北・南という名の小人を一人ずつ置いた。
小人の作るもの
小人は物語のなかで、すぐれた品の作り手として現れる。イーヴァルディの息子たちはシヴの金の髪と船スキーズブラズニルと槍グングニルを、ブロックとシンドリは腕輪ドラウプニルと金の猪と槌ミョルニルを作った。狼フェンリルを縛った紐グレイプニルも、黒いエルフの国の小人たちが作った。
一方で、小人の品や行いが災いの元になる話もある。小人フィアラルとガラルは賢いクヴァシルを殺し、その血に蜂蜜を混ぜて詩の蜜酒を作った。小人アンドヴァリは奪われた黄金と腕輪に、持つ者を滅ぼす呪いをかけた。『ヘルヴォルとヘイズレクのサガ』では、小人ドヴァリンとドゥリンが、王に無理やり作らされた剣テュルヴィングに死をもたらす言葉をかける。
登場する物語
- アンドヴァリの黄金と呪い――カワウソの償い神々がカワウソと思って殺したのは、レギンの兄弟オッタルだった。父フレイズマルが求めた償いは、皮を黄金で満たし覆うこと。ロキが小人アンドヴァリから奪った黄金と腕輪には、持つ者すべてを滅ぼす呪いがかけられていた。
- フェンリルを縛った紐――テュールの右手日ごとに大きくなる狼フェンリルを、神々は鉄の戒めで縛ろうとしたが果たせない。最後に用いたのは、絹のように柔らかな紐と、一人の神が差し出した右手だった。
- ユミルの体から作られた世界ボルの三人の息子は原初の巨人ユミルを倒し、その体を材料に大地と海と天を形づくる。血の洪水を生き延びた巨人の夫婦、天を支える四人の小人、人間のための砦ミズガルズまでをたどる。
- バルドルの死――ヤドリギの矢不吉な夢を見たバルドルのため、フリッグはあらゆるものに彼を傷つけないと誓わせる。神々はその不死身を遊びにしたが、ただ一つ誓いを求められなかったヤドリギを、ロキが盲目のヘズに射させた。神々と人間に起きた最大の不幸と、その火葬までを語る。
- フレイヤとヒュンドラ――オッタルの系譜女神フレイヤは洞窟の女巨人ヒュンドラを起こし、お気に入りの若者オッタルの先祖を語らせる。金の猪に乗る女神と、皮肉を返す女巨人。長い系譜と小さな世界の予言のあと、二人は激しい言葉を交わして別れる。
- 神々の宝物が生まれた日――シヴの髪と小人の賭けロキがシヴの髪を切り落としたことから、小人たちの鍛冶場で神々の宝物が次々に生まれる。自分の首を賭けたロキと、ふいごを吹き続けた小人ブロック。最後に最もすぐれた宝と認められたのは、トールの槌だった。
- ヘジン、ホグニ、ヒルド――終わらない戦い義兄弟の誓いを立てた二人の王ヘジンとホグニは、森の女ゲンドゥルの角杯によって引き裂かれる。娘ヒルドを奪われ王妃を殺されたホグニとヘジンの戦いは、斬っても斬っても起き上がる死者の戦いとなり、百四十年以上も続いた。二つの資料が伝える終わらない戦い。
- ヘルヴォルと魔剣テュルヴィング小人に無理やり作らせた剣テュルヴィングは、抜かれるたびに人を殺す呪いを負っていた。剣とともに死んだ父アンガンチュールの塚へ、男の姿の娘ヘルヴォルが炎をくぐって乗りこみ、死者を呼び起こして剣を求める。伝説サガが伝える、墓の父と娘の問答。
- 詩の蜜酒――クヴァシルの血とオーディンの獲物飲む者を詩人や学者にする蜜酒は、殺された賢者クヴァシルの血から作られた。小人から巨人へ、巨人からオーディンへ――殺害と取引と策略を経て、蜜酒は神々のもとへ運ばれる。
- 風の木に吊られたオーディン――ルーンと十八の歌オーディンは風の吹く木に九夜吊り下がり、槍に傷つき、自分自身への捧げ物となって、叫びながらルーンを手にした。『古エッダ』の「高き者の言葉」で、神自身が語る知恵の獲得と、そのあとに数えあげられる十八の歌。
- トールと小人アルヴィースの問答トールの留守に娘との婚約を取りつけた小人アルヴィースが、花嫁を迎えにやって来る。トールは、すべての世界での物の呼び名を答えられたら許すと言い、夜通し問いを重ねる。答えはすべて正しかったが、気づけば広間には朝日が差していた。
- 世界樹ユグドラシル――三本の根と三つの泉枝は全世界に広がり、天の上にまで届く大きなとねりこ、ユグドラシル。三本の根の下にある泉、木に住む生き物たち、運命を定めるノルン、そして天にある神々とエルフの住まいをたどる。
関連する事典項目
出典
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
- 原題
- Gylfaginning
- 該当箇所
- 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」
- 原題
- Skáldskaparmál
- 該当箇所
- 作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため一部本文を確認。グングニルと神器の製作はこの版の第35章。フロールヴ・クラキは第43章。個別記事の照合は別に記録する。
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。
