NORSE · STORY

トールと小人アルヴィースの問答

トールの留守に娘との婚約を取りつけた小人アルヴィースが、花嫁を迎えにやって来る。トールは、すべての世界での物の呼び名を答えられたら許すと言い、夜通し問いを重ねる。答えはすべて正しかったが、気づけば広間には朝日が差していた。

花嫁を迎えに来た者

ある者が言った。さあ、花嫁にわたしの長椅子を飾ってもらおう。急いで家へ帰るのだ。誰の目にも、わたしは婚礼を待ちきれない者に見えるだろう。家に帰れば、誰にも休みを邪魔されはしない。

そこへトールが言った。おまえはいったい何者だ。どうして鼻のまわりがそんなに青白い。近ごろ死者のそばで寝てでもいたのか。巨人のように見えるが、花嫁を得るために生まれた者ではあるまい。

その者は答えた。わたしはアルヴィース。地の下、岩の下に住まいがある。車を導く方に話があって来た。神々は約束を破らないでもらいたい。

トールは言った。破ってやる。花嫁については、父親にいちばんの権利があるのだ。約束が交わされたとき、わたしは家にいなかった。神々のなかで、娘を与えられるのはわたしだけだ。

アルヴィースは言った。輝くばかりの花嫁にそんな権利を言い立てるのは、どこの勇士だ。さすらいの男よ、おまえを知っている者はそう多くはあるまい。

トールは言った。わたしはヴィングソール、遠くまでさすらう者で、シズグラニの息子だ。わたしの意に反して、おまえが娘を得て婚礼の約束を手にすることはない。

アルヴィースは言った。それなら、すぐにあなたの同意を得てみせよう。この雪のように白い乙女を、わたしはどうしても妻にしたいのだ。

トールは言った。賢い客人よ、おまえが乙女の愛を得るのを止めはしない。もし、わたしが知りたいことを、すべての世界について話してくれるならな。

すべての世界での呼び名

トールは問いはじめた。アルヴィースよ、答えよ。おまえは人の運命をすべて知っている小人だ。すべての人の前に広がる大地は、それぞれの世界で何と呼ばれているのか。

アルヴィースは答えた。人間は「大地」と呼び、神々は「野」と呼ぶ。ヴァン神族は「道」と呼ぶ。巨人は「常に緑なるもの」、エルフは「育つもの」、天の聖なる者たちは「湿ったもの」と呼ぶ。

天は何と呼ばれるか。――人間は「天」、神々は「高み」、ヴァン神族は「風を織るもの」、巨人は「上の世界」、エルフは「美しい屋根」、小人は「滴る広間」と呼ぶ。

月は。――人間は「月」、神々は「炎」、ヘルの国では「車輪」。巨人は「行くもの」、小人は「輝くもの」、エルフは「時を告げるもの」と呼ぶ。

太陽は。――人間は「太陽」、神々は「太陽の円盤」。小人たちは「ドヴァリンを欺くもの」と呼び、巨人は「永遠に明るいもの」、エルフは「美しい車輪」と呼ぶ。

こうしてトールは、雲、風、凪、海、火、森、夜、種、酒と、次々に尋ねた。アルヴィースは、そのどれにも、人間、神々、ヴァン神族、巨人、エルフ、小人、ヘルの国の者たちが使う呼び名を答えていった。海は巨人には「鰻の住みか」、小人には「深み」。火は巨人には「かみつくもの」。夜は神々には「闇」、エルフには「眠りの喜び」、小人には「夢を織るもの」。酒はスットゥングの息子たちには「宴の飲み物」――。

差しこむ朝日

最後に、トールは言った。

一つの胸の中に、これほど多くの古い知恵が詰まっているのを、わたしは見たことがない。だが、わたしはいま、計略でおまえを欺かねばならない。小人よ、日の光がおまえを捕らえた。いま、この広間に太陽が差している。


出典について:本稿は『古エッダ』の「アルヴィースの言葉」に基づく再話です(英訳は H・A・ベロウズ訳、1923年)。写本には話し手の名が記されておらず、英訳者の注によって、アルヴィース(「すべてを知る者」の意)は小人、花嫁はトールの娘と理解されています。小人にとって日の光は命取りだと訳注は説明しますが、詩は「日の光がおまえを捕らえた」で終わり、アルヴィースがどうなったかは語りません。物の呼び名の問答は、詩の言い換え(ケニング)を集めたものと考えられています。本稿では問答の一部だけを紹介しました。

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