NORSE · STORY
ユミルの体から作られた世界
ボルの三人の息子は原初の巨人ユミルを倒し、その体を材料に大地と海と天を形づくる。血の洪水を生き延びた巨人の夫婦、天を支える四人の小人、人間のための砦ミズガルズまでをたどる。
巨人の死と血の洪水
牝牛アウズフムラがなめた氷の中から現れたブーリには、ボルという息子がいた。ボルと巨人の娘ベストラのあいだに生まれたのが、オーディン、ヴィリ、ヴェーの三兄弟である(物語「原初の巨人ユミルと牝牛アウズフムラ」)。
このボルの息子たちが、巨人ユミルを殺した。
倒れたユミルの傷からは、おびただしい血が流れ出た。その血の流れに、霜の巨人の一族はみな溺れてしまった。ただ一人、巨人たちがベルゲルミルと呼ぶ者だけが、妻とともに船に乗り、家族と逃れて助かった。のちの霜の巨人の一族は、みなこの夫婦から出たのだという。
体から作られた大地と海
ボルの息子たちは、ユミルの体をギンヌンガガプ――まだ何もなかった深い空間――の真ん中へ運び、そこで大地を作った。
肉からは陸が、骨からは岩山ができた。歯と奥歯、それに砕けた骨のかけらからは、砂利や石が作られた。
傷から流れ出た血は、海と水になった。神々は大地を形づくって固めると、そのまわりに輪のように海をめぐらせた。この海を渡るのは、たいていの人には難しいことだと思われている。
頭蓋の天と四人の小人
次に、神々はユミルの頭蓋骨を取り、それで天を作った。天は四つの隅をもつものとして大地の上に掲げられ、それぞれの隅の下には一人ずつ小人が置かれた。四人の名は、東、西、北、南という。
それから神々は、炎の国ムスペルヘイムから飛び散ってきた火の粉や燃えさしを集め、ギンヌンガガプの天の上にも下にも置いて、天と地を照らさせた。すべての火に置き場所が与えられた。天の下を自由にさまよう火にも場所が定められ、進む道筋が決められた。
昔の歌によれば、このときから日が数えられ、年が数えられるようになったという。
巨人の土地とミズガルズ
できあがった大地は、外側が輪の形をしていて、そのまわりを深い海が取り巻いている。
神々は、その海に沿った浜辺の土地を、巨人の一族に住まいとして与えた。一方、大地の内側には、巨人たちの敵意から守るための砦を世界のまわりにめぐらせた。その砦に用いたのはユミルのまつげで、神々はその場所をミズガルズと名づけた。
最後に、神々はユミルの脳を空へ投げ上げた。それが雲になった。
こうして天と地ができあがった。続いて神々は、海辺で見つけた二本の木から、最初の人間を作ることになる。
出典について:本稿は『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」第7〜8章に基づく再話です(英訳は A・G・ブロデュール訳、1916年)。原典では、ガングレリと名のる者が問い、ハール・ヤヴンハール・スリジの三人がかわるがわる答える問答のなかで語られます。ボルの息子たちがユミルを殺した理由は、原典には書かれていません。ベルゲルミルが乗った「船」について、訳注は臼の台とも訳せる語だと記しています。第8章の地の文では海はユミルの血から作られますが、同章に引かれる詩では「汗から海」とされています。同じ内容の詩節は『古エッダ』の「グリームニルの言葉」40〜41節(H・A・ベロウズ訳、1923年)にあり、そちらでは海は血から作られます。「ヴァフスルーズニルの言葉」21節にも、ユミルの肉・骨・頭蓋・血から大地・山・天・海ができたとうたわれています。
出典・資料
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」 — 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩 — 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
