NORSE · STORY
滅びのあとに生まれ変わる世界
スルトの火が消えたあと、大地はふたたび緑のまま海から浮かび上がる。生き残った神々、死者の国から帰るバルドル、森に隠れて炎をしのいだ二人の人間、そして母の道をたどる太陽の娘。神々の黄昏のあとの世界を語る。
死者の住まい
世界は焼け、神々も勇士たちも人間たちも、みな死んでしまった。それでも、人はみな、いつまでもどこかの世界で生きつづけるのだという。では、そのときどこに住むのだろうか。
よい住まいも、悪い住まいも、たくさんある。いちばんよいのは、天にあるギムレーにいることである。また、オーコールニルにあるブリミルという館には、よい飲み物がたっぷりある。それを楽しみにする者にはうれしい所だ。ニザの山々には、赤い金でできたシンドリという館も立っている。こうした館には、善い人々、心の清い人々が住む。
けれども、ナーストレンドには大きくて悪い館がある。その戸は北を向いている。館はすべて蛇の背で編まれていて、蛇の頭はみな館の内側を向き、毒を吹いている。そのため館の中には毒の川が流れ、誓いを破った者や人殺しは、その川を歩いて渡らなければならない。
それよりもっとひどいのはフヴェルゲルミルである。そこでは呪われた蛇が、死者たちの屍を引き裂いている。
海から浮かぶ大地
やがて大地が、ふたたび海の中から浮かび上がってくる。大地は緑で美しく、種をまかなくても実りをもたらす。
神々のなかにも、生き残る者がいる。ヴィーザルとヴァーリである。海も、スルトの炎も、二人を傷つけなかった。二人は、かつてアースガルズがあった場所、イザヴォッルに住む。
そこへトールの息子たち、モージとマグニもやって来る。二人は父の槌ミョルニルを手にしている。
草の中の金の駒
こうして皆が一つところに座り、語り合う。秘められた知恵を思い起こし、昔起こった出来事――ミズガルズの大蛇ヨルムンガンドのこと、フェンリルのこと――を話し合う。
そして神々は、草の中に、かつてアース神族がもっていた金の盤上の駒を見つける。
森に隠れた二人
人間もまた生き残る。スルトの炎が燃えさかるあいだ、ホッドミーミルの森という所に、二人の人間が隠れている。名をリーヴとリーヴスラシルという。二人は朝露を食べて生きのびる。
この二人から数多くの子孫が生まれ、やがて全世界にふたたび人が住むようになる。
太陽の娘
不思議に思うかもしれないが、太陽は、狼に奪われる前に、自分に劣らず美しい娘を一人生んでいる。神々が死んだあと、その娘が母の道をたどって空を進む。
語り手は、ここで世界の行く末の話を終える。これより先を問われても、どこから答えが来るのか自分には分からない。世界の行く末を、これほど長く語った者の話を聞いたことはない。聞いたことを役立てるがいい――そう語り手は言う。
巫女が見た新しい世界
『古エッダ』の「巫女の予言」は、同じ新しい世界を、巫女の目に映る光景としてうたっている。
大地が、緑のまま波の中からふたたび浮かび上がる。滝が流れ落ち、鷲が飛んで、崖の下で魚を捕る。神々はイザヴォッルに集まり、大地を取り巻いていた大蛇のことを語り、過ぎ去った大いなる出来事と、神々の支配者の古いルーンを思い出す。かつて神々のものだった金の盤が、草の中にふたたび見事な姿で立つ。
種をまかない畑が実り、あらゆる災いが癒え、バルドルが帰ってくる。バルドルとヘズは、オーディンの戦の館に住む。ヘーニルは予言の杖を手にする。太陽より美しい、金で屋根を葺いた館がギムレーに立ち、そこには正しい支配者たちが住み、いつまでも幸せに暮らす。
けれども詩の最後には、暗い竜ニーズヘッグがニザフィョッルから飛んできて、人々の屍を翼に乗せて運ぶ姿がうたわれる。そこで巫女は「もう、わたしは沈まねばならない」と言い、詩は終わる。
出典について:本稿の前半は『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」第52〜53章(英訳は A・G・ブロデュール訳、1916年)、最後の節は『古エッダ』「巫女の予言」59〜66節(H・A・ベロウズ訳、1923年)に基づく再話です。「ギュルヴィたぶらかし」では、ガングレリと名のる者の問いに、スリジとハールが答えます。この問答がどのように終わるかは、事典「ギュルヴィたぶらかし」で紹介しています。二つの資料は、バルドルとヘズの住まいや、ヘーニル、力ある主、ニーズヘッグの場面などで異なります。
出典・資料
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」 — 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩 — 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
