ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
古エッダ
Poetic Edda
北欧の神話と英雄伝説をうたった古い詩を集めたもの。王の写本と呼ばれる写本を中心に、ほかの写本の詩を加えて編まれる。「詩のエッダ」「セームンドのエッダ」とも呼ばれる。
名の由来
ベロウズの英訳(1923年)の総序によれば、スノッリ・ストゥルルソンの書いた詩人のための手引き書は「エッダ」と呼ばれていた。一方アイスランドでは、この書物かそれに似たものを、スノッリよりずっと昔のセームンド賢者に帰する言い伝えが残っていた。スノッリの書は多くの詩を引いて神話を語っていたので、セームンドはスノッリが拠った韻文のエッダを書くか編むかしたのだろうと考えられた。
1643年、スカールホルトの司教ブリニョールヴル・スヴェインソンが、1300年ごろまでに書かれたとみられる写本を見つけた。そこには完全なものと断片を合わせて二十九の詩があり、スノッリが引いた行や節と同じものも含まれていた。司教はこれを「セームンドのエッダ」と名づけ、以来この詩集は「セームンドのエッダ」「古エッダ」「詩のエッダ」として知られるようになった。
写本と詩
この写本はコペンハーゲンの王立図書館にあり、王の写本(コーデックス・レギウス)として知られ、刊行されるエッダ詩のもとになってきた。ほかの写本にある似た詩が加えられ、ベロウズの訳を含む多くの版は三十四の詩を収める。たとえば「バルドルの夢」は、王の写本にはなく、アルナ・マグヌソン写本集の短い写本にだけある詩で、「リーグの歌」「ヒュンドラの歌」なども別の写本から加えられた。
ベロウズは、詩を編んだ者の名も「エッダ」という題の意味も推測の域を出ない、と記している。この事典の物語の多くは、ベロウズ訳のこの詩集から、神々の物語と英雄の物語を再話している。
登場する物語
- アース神族とヴァン神族――最初の戦いと和平世界で最初の戦いは、二つの神の一族のあいだで起こった。焼かれても生き返る女、破られた神々の壁、人質の交換、そして和平のしるしの甕。資料ごとに少しずつ残された戦いと和解の物語を読む。
- シグルズを悼むグズルーン夫シグルズの亡骸のそばで、グズルーンは泣くことさえできなかった。女たちが自分の悲しみを語っても、涙は出ない。ゴッルロンドが覆いを取って夫の顔を見せたとき、ようやく涙があふれる。『古エッダ』の二つの「グズルーンの歌」が伝える嘆き。
- グズルーンの潔白を試す釜アトリの館で、侍女ヘルキャは王妃グズルーンがシュズレク王と通じていると告げ口する。グズルーンは聖なる石にかけて潔白を誓い、煮えたぎる釜に手を入れて底の石を拾い上げてみせる。次に手を入れたのは、告げ口をしたヘルキャだった。
- ヘルギとシグルーン――戦いと婚姻ノルンたちに運命を織られて生まれたシグムンドの子ヘルギは、十五歳でフンディング王を討つ。望まぬ婚約から逃れたいヴァルキューリアのシグルーンに頼まれ、ヘルギは大船団で嵐の海を渡り、フレカステインの戦いに勝つ。けれども、その勝利には大きな代償があった。
- オーディンの言葉と旅人の心得――「高き者の言葉」客として家を訪ねるときの用心、酒の飲み方、友と贈り物、ほどほどの知恵、そして決して死なない名声。『古エッダ』の「高き者の言葉」は、オーディンの言葉として伝わる生きるための忠告と、神自身の苦い恋の体験談を語る。
- オーディンが片目を失った伝承知恵の泉の水を飲むため、自分の片目を担保として差し出したオーディン。『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」と『古エッダ』「巫女の予言」からたどる伝承。
- ラグナロクの前兆――三つの冬と解き放たれる縛め神々の運命の時の前に、恐ろしい冬が三度続き、世界は争いに満ちる。太陽と月は狼に呑まれ、大地が揺れて縛めは切れ、狼と大蛇、死者の爪の船、炎の軍勢が、最後の戦いの野へと集まってくる。
- トールの槌が盗まれた日雷神トールの槌ミョルニルが消えた。返還の条件は女神フレイヤとの結婚。神々が考えた奇策とは。
- 滅びのあとに生まれ変わる世界スルトの火が消えたあと、大地はふたたび緑のまま海から浮かび上がる。生き残った神々、死者の国から帰るバルドル、森に隠れて炎をしのいだ二人の人間、そして母の道をたどる太陽の娘。神々の黄昏のあとの世界を語る。
関連する事典項目
出典
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。
