NORSE · STORY
最後の戦い――神々の黄昏
ヘイムダルの角笛が神々を呼び起こし、ヴィーグリーズの野で最後の戦いが始まる。オーディンは狼に呑まれ、トールは大蛇と相打ちになり、フレイは剣のないまま炎の巨人に倒れる。最後にスルトの火が世界を焼きつくす。
角笛が鳴る
神々の敵がヴィーグリーズの野に集まると(物語「ラグナロクの前兆――三つの冬と解き放たれる縛め」)、ヘイムダルが立ち上がる。そしてギャラルホルンを力のかぎり吹き鳴らし、すべての神々を目覚めさせる。神々は集まって会議を開く。
オーディンは馬でミーミルの泉へ行き、自分と自分の軍勢のために、ミーミルの助言を求める。
そのとき、ユグドラシルのとねりこが震える。天にも地にも、恐れないものは何ひとつない。
野へ進む神々
アース神族は戦の装いを身につけ、すべての勇士たちとともに、野へと進んでいく。先頭はオーディンである。金の兜をかぶり、美しい鎖帷子を着て、グングニルという槍を手にしている。
オーディンはフェンリル(フェンリス狼)に向かっていく。トールはオーディンの傍らに進み出るが、オーディンを助けることはできない。トール自身が、ミズガルズの大蛇ヨルムンガンドとの戦いで手いっぱいになるからである。
フレイとスルト
フレイは、炎の巨人スルトと戦う。二人のあいだには激しい戦いが続くが、やがてフレイは倒れる。フレイの死の原因は、あのよい剣を持っていなかったことにある。かつてフレイは、その剣を従者スキールニルに与えてしまったのである(物語「フレイとゲルズ――使者スキールニルの求婚」)。
ガルムとテュール
グニパの洞窟の前につながれていた犬ガルムも、解き放たれる。ガルムはあらゆる怪物のなかで最も恐ろしいものである。ガルムはテュールと戦い、両者は互いに相手を殺す。
トールと大蛇
トールはミズガルズの大蛇を殺す。けれども、そこから九歩離れたところで、大蛇が吹きかけた毒のために、地に倒れて死ぬ。
オーディンの最期とヴィーザルの靴
狼がオーディンを呑みこむ。それがオーディンの最期となる。
けれども、すぐにオーディンの息子ヴィーザルが進み出て、狼の下あごに片足を踏みかける。その足には、世の始まりから材料が集められてきた靴を履いている。人々が靴を作るとき、つま先やかかとから切り捨てる革の切れ端が、その材料である。だから、アース神族を助けたいと心から願う者は、その切れ端を捨てるべきだという。
ヴィーザルは片手で狼の上あごをつかみ、その喉を引き裂く。それが狼の死となる。
ロキとヘイムダル
ロキはヘイムダルと戦い、両者は互いに相手を殺す。
スルトの炎
そのあとすぐに、スルトが大地に火を投げかけ、全世界を焼きつくす。
「巫女の予言」はうたう。太陽は暗くなり、大地は海に沈む。輝く星々は天から落ちる。煙が荒れ狂い、赤い火が燃えさかり、高い炎が天そのものをなめる。
物語は、ここで終わりではない。焼きつくされた世界のその後は、物語「滅びのあとに生まれ変わる世界」で語る。
出典について:本稿は『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」第51章の後半に基づく再話です(英訳は A・G・ブロデュール訳、1916年)。原典では、ガングレリと名のる者の問いに語り手ハールが答える問答のなかで語られ、章の終わりに『古エッダ』「巫女の予言」の詩節がまとめて引かれています。資料によって細部が異なります。散文ではヴィーザルが狼の上あごをつかんで喉を裂きますが、引かれた詩と「巫女の予言」47〜57節(H・A・ベロウズ訳、1923年)では、ヴィーザルは剣を狼の心臓に突き刺します。また散文ではオーディンはミーミルの泉へ行って助言を求めますが、詩ではミーミルの首と語るとされます。
出典・資料
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」 — 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩 — 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
