ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
ルーン
Rúnar
神話で知恵と力をもつとされる文字。オーディンは風の吹く木に九夜吊られてルーンを得たとうたわれる。英雄伝説ではルーンを刻んで勝利や守りを求め、また警告のルーンが書き換えられて悲劇を招く。
オーディンが得たルーン
『古エッダ』の「高き者の言葉」(ハーヴァマール)では、語り手のオーディンが、風の吹く木に九夜のあいだ吊り下がり、槍で傷つき、自分自身を自分自身に捧げたと語る。誰もパンも角杯も与えてくれないなか、下を見下ろし、叫びながらルーンを拾い上げたという。ベロウズの訳注は、この木をとねりこユグドラシルとしている。
詩は続けて、ルーンは神々が作り、神々にはオーディンが、エルフにはダーインが、小人にはドヴァリンが書いたとうたい、悲しみや病を助ける歌、敵の刃をなまらせる歌、縛めを解く歌など、語り手の知る呪文を数えあげる。
英雄伝説のルーン
『ヴォルスンガ・サガ』では、山上で目覚めたブリュンヒルドがシグルズにルーンの知恵を授ける。勝利のルーンは剣の柄と刃に刻んでテュールの名を二度唱え、海のルーンは船尾と舵に刻むという。のちにグズルーンは、夫アトリのたくらみに気づいて兄弟たちへの警告のルーンを刻んで送ったが、使者がそれを書き換えたため、兄弟は招きに応じてアトリのもとへ向かった。
『古エッダ』の「リーグの歌」では、神リーグが森から来て若いヤルルにルーンを教え、その末の息子コンは永遠のルーン、命のルーンを使うことを学ぶ。
登場する物語
- 眠る戦乙女とシグルズヒンドフェルの山上に燃える火の中、盾をめぐらせた砦で、武装したまま眠る者がいた。シグルズが鎖帷子を裂くと、目覚めたのはオーディンに眠らされた戦乙女ブリュンヒルドだった。乙女はルーンの知恵と生きるための忠告を授け、二人は誓いを交わす。
- フレイとゲルズ――使者スキールニルの求婚世界を見渡す高座から巨人の娘ゲルズを見たフレイは、恋に苦しむ。馬と剣を借りた従者スキールニルは炎を越えて巨人の館へ行き、黄金の林檎と腕輪、剣の脅し、そして恐ろしい呪いの言葉で、ついに会う約束を取りつける。
- アトリとの結婚と兄弟への招き忘れ薬を飲まされたグズルーンは、意に反してフン族の王アトリに嫁ぐ。黄金を狙うアトリは兄弟たちを宴に招き、グズルーンは狼の毛を結んだ腕輪で警告したが、使者はルーンを書き換えていた。妻たちの不吉な夢を退け、グンナルとホグニは旅立つ。
- ヘルギとシグルーン――死者との再会オーディンの槍を授かった義兄弟ダグに討たれたヘルギ。シグルーンは兄を呪い、夫の塚のそばで嘆く。ある夕方、塚が開いて、死んだヘルギが仲間とともに馬で戻ってくる。冷たい夫を抱いて一夜を過ごしたシグルーンに、夜明けは別れを告げた。
- 風の木に吊られたオーディン――ルーンと十八の歌オーディンは風の吹く木に九夜吊り下がり、槍に傷つき、自分自身への捧げ物となって、叫びながらルーンを手にした。『古エッダ』の「高き者の言葉」で、神自身が語る知恵の獲得と、そのあとに数えあげられる十八の歌。
- オーディンとヴァフスルーズニルの知恵比べ名を偽って巨人の館を訪れたオーディンは、首を賭けた問答に挑む。世界の始まりから神々の滅びのあとまでを問い合った末、最後の一問で巨人は客の正体を悟る。
- オーディンの言葉と旅人の心得――「高き者の言葉」客として家を訪ねるときの用心、酒の飲み方、友と贈り物、ほどほどの知恵、そして決して死なない名声。『古エッダ』の「高き者の言葉」は、オーディンの言葉として伝わる生きるための忠告と、神自身の苦い恋の体験談を語る。
- リーグの旅と三つの家神リーグは三つの家を訪ね、それぞれ三夜を過ごす。その後に生まれたスレール、カルル、ヤルルの三人の息子から、奴隷・自由農民・貴人の一族が始まったと詩は語る。ヤルルの末子コンがルーンを学び、鴉に声をかけられたところで、詩は途切れている。
- シグルズの成長と馬グラニ亡き父シグムンドの子シグルズは、デンマークのヒャールプレク王の館で育ち、鍛冶の名手レギンに学ぶ。森で出会った長いひげの老人の助けで、スレイプニルの血を引く馬グラニを選んだシグルズに、レギンは竜ファーヴニルの黄金の話をもちかける。
- スヴィプダグとメングロズ――母の呪歌と炎の館の門番継母に、誰も行けない所にいる乙女メングロズを探せと命じられた若者スヴィプダグは、死んだ母グローアを墓から呼び起こし、九つの呪歌を授かる。炎に囲まれた館の前で門番と問答を重ねた末、門が開く。
- 滅びのあとに生まれ変わる世界スルトの火が消えたあと、大地はふたたび緑のまま海から浮かび上がる。生き残った神々、死者の国から帰るバルドル、森に隠れて炎をしのいだ二人の人間、そして母の道をたどる太陽の娘。神々の黄昏のあとの世界を語る。
関連する事典項目
出典
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。
- 『ヴォルスンガ・サガ』
- 原題
- Völsunga Saga: The Story of the Volsungs and Niblungs
- 該当箇所
- I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
- 参照訳
- Eiríkr Magnússon and William Morris; edited by H. Halliday Sparling, Walter Scott (1888)
2026-10-28、章立てと目次を確認。サガ本文を全章照合した記録ではない。エッダの英雄詩や大陸のニーベルンゲン伝承を同一版として混ぜない。
