ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
ヴィーザル
Víðarr
オーディンの息子で、「無口な神」と呼ばれる。トールに次ぐほど強い。世界の終わりの戦いで、父オーディンを呑みこんだ狼フェンリルを倒し、新しい世界を生きのびる。
無口な神
ヴィーザルは無口な神で、厚い靴を履いている。『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」は、ヴィーザルはトールに近いほど強く、神々はあらゆる戦いで彼を大いに頼みにしていると語る。「詩語法」は、ヴィーザルを「無口な神」「鉄の靴の持ち主」「フェンリス狼の敵にして殺した者」「神々の仇を討つ者」「オーディンの息子」などと言い換え、トールが一夜を過ごした女巨人グリーズを「無口なヴィーザルの母」と呼んでいる。
『古エッダ』の「グリームニルの言葉」は、木々と高い草に満ちたヴィージを、ヴィーザルの土地と呼ぶ。「ロキの口論」では、宴に入ってきたロキに席を与えるよう、オーディンがヴィーザルに命じる。
狼を倒す
世界の終わりの戦いで、狼フェンリルはオーディンを呑みこむ。すぐにヴィーザルが進み出て、片足を狼の下あごに踏みかける。その足の靴は、世の始まりから集められてきた材料でできている。それは人々が靴を作るとき、つま先やかかとから切り落とす革の切れ端で、アース神族を助けたいと願う者はその切れ端を捨てるべきだという。ヴィーザルは片手で狼の上あごをつかみ、喉を引き裂いて殺す。
これは「ギュルヴィたぶらかし」の散文の語りである。同じ章に引かれる詩と、『古エッダ』の「巫女の予言」では、ヴィーザルは剣を狼の心臓に突き刺して父の仇を討つ。「ヴァフスルーズニルの言葉」は、ヴィーザルが狼の恐ろしいあごを引き裂くとうたう。
新しい世界
世界が焼けたあと、ヴィーザルとヴァーリは生きのびる。二人は海にもスルトの炎にも害されず、かつてアースガルズのあったイザヴォッルに住む、と「ギュルヴィたぶらかし」は語る。
登場する物語
- ロキの口論――エーギルの宴の騒動海の巨人エーギルの館の宴に、追い出されたロキが戻ってくる。席を求めたロキは、神々と女神たちに次々と悪口を浴びせ、最後に現れたトールの槌の脅しの前で、ようやく館を去る。『古エッダ』の「ロキの口論」。
- オーディンとヴァフスルーズニルの知恵比べ名を偽って巨人の館を訪れたオーディンは、首を賭けた問答に挑む。世界の始まりから神々の滅びのあとまでを問い合った末、最後の一問で巨人は客の正体を悟る。
- 最後の戦い――神々の黄昏ヘイムダルの角笛が神々を呼び起こし、ヴィーグリーズの野で最後の戦いが始まる。オーディンは狼に呑まれ、トールは大蛇と相打ちになり、フレイは剣のないまま炎の巨人に倒れる。最後にスルトの火が世界を焼きつくす。
- トールとゲイルロズの館鷹の姿で捕まったロキは、命と引きかえに、トールを槌も持たせず巨人ゲイルロズの館へ連れていくと誓う。女巨人グリーズに道具を借りたトールは、増水する川を渡り、持ち上がる椅子と灼けた鉄の棒をしのぐ。
- 滅びのあとに生まれ変わる世界スルトの火が消えたあと、大地はふたたび緑のまま海から浮かび上がる。生き残った神々、死者の国から帰るバルドル、森に隠れて炎をしのいだ二人の人間、そして母の道をたどる太陽の娘。神々の黄昏のあとの世界を語る。
関連する事典項目
出典
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
- 原題
- Gylfaginning
- 該当箇所
- 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」
- 原題
- Skáldskaparmál
- 該当箇所
- 作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため一部本文を確認。グングニルと神器の製作はこの版の第35章。フロールヴ・クラキは第43章。個別記事の照合は別に記録する。
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。





