ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
アース神族
Æsir
オーディンを長とする神々の一族。アースガルズに住み、トール、バルドル、テュールらが属する。ヴァン神族とは戦いと人質の交換を経て和平を結んだ。
神々の一族
『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」によれば、オーディンと妻フリッグの血筋から、アース神族と呼ばれる一族が出た。それは神の一族であるという。同じ書物は、信じるべき神々であるアース神族は十二人で、女神たちもそれに劣らず聖なる者だと語り、オーディンを最も高く最も年長の神として、ほかの神々はみな、子が父に従うように彼に仕えるとする。
そのあとに続けて、トール、バルドル、ニョルズ、フレイ、テュール、ブラギ、ヘイムダル、ヘズ、ヴィーザル、ヴァーリ、ウル、フォルセティが順に紹介され、ロキも「アース神族に数えられる」者として挙げられる。「詩語法」では、海の神エーギルを迎えた宴で裁き手として高座に着いた十二のアース神族として、トール、ニョルズ、フレイ、テュール、ヘイムダル、ブラギ、ヴィーザル、ヴァーリ、ウル、ヘーニル、フォルセティ、ロキの名が挙がる。
ほかの一族との関わり
アース神族はアースガルズに住み、毎日ビフレストを渡ってウルズの泉で裁きの場を開く。ニョルズはアース神族の生まれではなく、ヴァン神族から人質として来た神で、その子フレイとフレイヤも、資料ではアース神族とともに語られる。巨人たちとはしばしば争い、ロキの子らや巨人の職人、スィアチやフルングニルの話のように、巨人の来訪や神々の旅が多くの物語を生んでいる。
登場する物語
- アース神族とヴァン神族――最初の戦いと和平世界で最初の戦いは、二つの神の一族のあいだで起こった。焼かれても生き返る女、破られた神々の壁、人質の交換、そして和平のしるしの甕。資料ごとに少しずつ残された戦いと和解の物語を読む。
- 神々の城壁を築いた者――太陽と月を求めた職人一冬で城壁を築く代わりに、女神フレイヤと太陽と月を求めた職人。工事が期限の前に仕上がりそうになると、神々はロキを脅して取り決めを壊させる。オーディンの馬スレイプニルの生まれを語る話。
- 眠る戦乙女とシグルズヒンドフェルの山上に燃える火の中、盾をめぐらせた砦で、武装したまま眠る者がいた。シグルズが鎖帷子を裂くと、目覚めたのはオーディンに眠らされた戦乙女ブリュンヒルドだった。乙女はルーンの知恵と生きるための忠告を授け、二人は誓いを交わす。
- フェンリルを縛った紐――テュールの右手日ごとに大きくなる狼フェンリルを、神々は鉄の戒めで縛ろうとしたが果たせない。最後に用いたのは、絹のように柔らかな紐と、一人の神が差し出した右手だった。
- ロキの捕縛と罰バルドルを死なせ、ヘルから取り戻すことも妨げたロキは、神々の怒りを逃れて山に隠れ、鮭の姿で滝にひそむ。自分で考えた網の灰から居場所を見破られたロキは、トールの手に捕らえられ、神々の運命の時まで岩に縛られる。
- バルドルの死――ヤドリギの矢不吉な夢を見たバルドルのため、フリッグはあらゆるものに彼を傷つけないと誓わせる。神々はその不死身を遊びにしたが、ただ一つ誓いを求められなかったヤドリギを、ロキが盲目のヘズに射させた。神々と人間に起きた最大の不幸と、その火葬までを語る。
- シグルズと竜ファーヴニル竜ファーヴニルが水を飲みに這う道で、シグルズは穴を掘って待ち伏せる。現れた老人の助言どおり血を流す穴をいくつも掘り、グラムで竜の心臓を突いた。死にゆく竜は名を問い、黄金の呪いを告げ、二人は最後の問答を交わす。
- 神々の宝物が生まれた日――シヴの髪と小人の賭けロキがシヴの髪を切り落としたことから、小人たちの鍛冶場で神々の宝物が次々に生まれる。自分の首を賭けたロキと、ふいごを吹き続けた小人ブロック。最後に最もすぐれた宝と認められたのは、トールの槌だった。
- ヘルの国へ向かったヘルモーズバルドルを取り戻すため、ヘルモーズはスレイプニルに乗り、九夜をかけて死者の国へ向かう。ヘルが示した条件は、世界のすべてのものがバルドルのために泣くこと。ほとんどすべてが泣いたが、洞窟の女巨人だけが涙を拒んだ。
- イズンと林檎――老いていく神々鷲に捕らえられたロキは、放してもらう代わりに、林檎を守る女神イズンを神々の国の外へ誘い出すと誓う。イズンが連れ去られると、神々はたちまち老いはじめた。
- ロキの三人の子ども――狼と大蛇とヘルロキと女巨人アングルボザのあいだに生まれた三人の子は、神々に大きな災いをもたらすと予言されていた。オーディンは子らを連れてこさせ、大蛇を海へ、ヘルを死者の国へ投じ、狼だけを手もとで育てる。
- 詩の蜜酒――クヴァシルの血とオーディンの獲物飲む者を詩人や学者にする蜜酒は、殺された賢者クヴァシルの血から作られた。小人から巨人へ、巨人からオーディンへ――殺害と取引と策略を経て、蜜酒は神々のもとへ運ばれる。
- 最後の戦い――神々の黄昏ヘイムダルの角笛が神々を呼び起こし、ヴィーグリーズの野で最後の戦いが始まる。オーディンは狼に呑まれ、トールは大蛇と相打ちになり、フレイは剣のないまま炎の巨人に倒れる。最後にスルトの火が世界を焼きつくす。
- スカジとニョルズ――山と海の暮らし父スィアチの仇を討とうと武装してアースガルズへ来た女巨人スカジは、足だけを見て夫を選ぶことになる。選んだのは海の神ニョルズ。九夜ずつ山と海で暮らそうとした二人の、かみ合わない住まいの物語。
- トールとフルングニルの決闘――頭に残った砥石馬比べからアースガルズへ入りこみ、酔って大言を吐いた巨人フルングニル。トールは初めての一騎打ちに臨み、槌で巨人を倒すが、砕けた砥石のかけらは今もトールの頭に刺さったままだという。
- トールのウトガルザ・ロキ訪問――勝てなかった技比べ巨人の国を目指したトールの一行は、手袋の中で夜を明かし、ウトガルズの城で技比べに挑む。飲み角、猫、老女――どれにも勝てなかった雷神に、城の王は最後に仕掛けを明かす。
- 滅びのあとに生まれ変わる世界スルトの火が消えたあと、大地はふたたび緑のまま海から浮かび上がる。生き残った神々、死者の国から帰るバルドル、森に隠れて炎をしのいだ二人の人間、そして母の道をたどる太陽の娘。神々の黄昏のあとの世界を語る。
- 世界樹ユグドラシル――三本の根と三つの泉枝は全世界に広がり、天の上にまで届く大きなとねりこ、ユグドラシル。三本の根の下にある泉、木に住む生き物たち、運命を定めるノルン、そして天にある神々とエルフの住まいをたどる。
関連する事典項目
出典
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
- 原題
- Gylfaginning
- 該当箇所
- 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」
- 原題
- Skáldskaparmál
- 該当箇所
- 作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため一部本文を確認。グングニルと神器の製作はこの版の第35章。フロールヴ・クラキは第43章。個別記事の照合は別に記録する。
