NORSE · STORY

シグルズと竜ファーヴニル

竜ファーヴニルが水を飲みに這う道で、シグルズは穴を掘って待ち伏せる。現れた老人の助言どおり血を流す穴をいくつも掘り、グラムで竜の心臓を突いた。死にゆく竜は名を問い、黄金の呪いを告げ、二人は最後の問答を交わす。

竜の通り道

シグルズとレギンは、ファーヴニルが水を飲みに這っていくいつもの道をたどって、荒野を上っていった(物語「父の仇を討つシグルズ――嵐の海の老人」)。ファーヴニルが下の水を飲むときに横たわる崖は、高さが三十ファゾムもあるという。

シグルズは言った。レギン、この竜はほかの竜より大きくないと言ったな。だが、足跡はとんでもなく大きいようだ。

レギンは言った。穴を掘って、その中に座っていろ。竜が水のところへ来たら、心臓を突いて殺せ。そうすれば大きな名声が得られる。

シグルズは言った。竜の血の前にいたら、わたしはどうなる。

レギンは言った。何もかも恐れているのなら、助言しても無駄だ。勇ましい心という点で、おまえは一族に少しも似ていない。

シグルズは荒野をまっすぐに馬で進んだ。レギンはひどく恐れて、立ち去ってしまった。

老人の助言

シグルズが穴を掘っていると、長いひげの老人がやって来て、何をしているのかと尋ねた。シグルズは話した。

老人は言った。それはまずい助言だ。穴をいくつも掘って、そこへ血を流しこませるがいい。そしてそのうちの一つに座って、竜の心臓を突け。

そう言うと、老人は消えてしまった。シグルズは、教えられたとおりに穴を掘った。

グラムの一突き

やがて竜が水場へ這ってきた。そのまわりで大地は揺れ、竜は行く手の道に毒を吹き散らしながら進んだ。けれどもシグルズは、その吠え声にも震えず、少しも恐れなかった。

竜が穴の上を這っていったとき、シグルズは剣を竜の左の肩の下へ突き上げ、柄まで深く沈めた。そして穴から跳び出し、剣を引き戻した。シグルズの腕は、肩まで血まみれになった。

大きな竜は、自分が致命傷を負ったと悟ると、頭と尾をめちゃくちゃに振り回した。前にあるものはすべて打ち砕かれた。

名を問う竜

致命傷を負ったファーヴニルは尋ねた。おまえは誰だ。父は誰だ。どんな一族の者が、わたしに武器を向けるほど大胆になれたのか。

シグルズは答えた。わたしの一族は人に知られていない。わたしは「気高い獣」と呼ばれる。父も母もなく、ひとりでここへ来た。

ファーヴニルは言った。父も母もいないなら、いったい何から生まれたというのだ。この死の日に名を告げなくても、自分がうそをついていることは、おまえ自身がよく知っている。

シグルズは言った。わたしはシグルズと呼ばれ、父はシグムンドだった。

死にゆく竜との問答

ファーヴニルは言った。誰にけしかけられて、こんなことをした。誰もがわたしと、わたしの恐ろしい顔を恐れていると聞いたことはなかったのか。目の輝く若者よ、おまえには熱心な父がいたのだな。

シグルズは答えた。勇ましい心がわたしを駆り立てた。そして強い手と、もうおまえもよく知るこの鋭い剣が、それをなしとげさせた。勇ましい年寄りに、臆病な若者がいることはめったにない。

ファーヴニルは言った。一族のなかで育ったのなら、怒りにまかせて人を殺す腕もあろう。だが戦で捕らえられた身の者が、わたしに向かってくる心をもつとは驚きだ。捕らわれの者に、戦う心をもつ者は少ないものだ。

シグルズは言った。わたしが一族から遠く離れていると、あざけるのか。捕らわれの身ではあったが、縛られたことは一度もない。わたしが十分に自由だったことは、おまえも身をもって知っただろう。

ファーヴニルは言った。わたしの言葉を怒って受け取るのだな。だが聞け。わたしが持っていたあの黄金は、おまえの破滅ともなるだろう。

シグルズは言った。誰でも、あの最期の日まで富を持っていたいものだ。それでも、人は誰しも一度は死ぬ。

ファーヴニルは言った。おまえはわたしの助言にはほとんど従うまい。だが気をつけよ。不用意に海を渡れば溺れる。それよりも陸にとどまって、凪の来るのを待て。

シグルズは言った。ファーヴニルよ、そんなに賢いのなら話してくれ。人の子らの運命を定めるノルンとは誰なのか。

ファーヴニルは答えた。ノルンは多く、互いに遠く離れている。アース神族の一族の者もいれば、エルフの一族の者もいる。ドヴァリンの娘たちもいる。

シグルズは尋ねた。スルトとアース神族が剣の水を混ぜ合わせる島は、何と呼ばれるのか。

形をなさぬもの、と呼ばれる、とファーヴニルは答えた。

黄金の呪い

ファーヴニルはまた言った。兄弟のレギンが、わたしの死をもたらした。そしてレギンは、おまえの死ももたらすだろう。それを思うと、わたしの心は喜ぶ。物事はあいつの思いどおりになるのだ。

ファーヴニルは語った。わたしは兄弟の遺産の上にうずくまってから、皆の前に恐怖の兜をかざしてきた。四方に毒を吹き、誰ひとり近寄れなかった。どんな武器も恐れず、どれほど多くの者が前に立っても、自分が誰よりも強いと思ってきた。皆がわたしをひどく恐れていたのだ。

シグルズは答えた。その恐怖の兜で勝てる者はめったにいない。大勢のなかに混じった者は、いつか、誰か一人がほかの皆よりはるかに強いわけではないと知るのだ。

ファーヴニルは言った。おまえに助言してやろう。馬に乗り、できるだけ急いでここを去れ。致命傷を負った者が、それでも仇を討つことはよくあるのだから。

シグルズは言った。そんな助言には少しも従わない。それどころか、いまからおまえの住みかへ馬で行き、おまえの一族のあの大きな宝を手に入れる。

ファーヴニルは言った。では行け。一生暮らせるだけの黄金が見つかるだろう。だがその黄金は、おまえの破滅となる。そして、それを持つ者すべての破滅となるのだ。

シグルズは立ち上がって言った。富を失えば決して死なないと分かっているのなら、わたしは富を捨てて家へ帰るだろう。だが勇ましく誠実な者は、誰でも最期の日まで富に手をかけていたいものだ。ファーヴニルよ、死とヘルがおまえを連れ去るまで、苦しみのなかでのたうっているがいい。

そうしてファーヴニルは死んだ。


出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第18章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。シグルズが初め名を隠したのは、英訳の注によれば、死にゆく者は名を知った敵に呪いをかけることができると考えられていたためです。穴を掘る助言をした長いひげの老人が誰かは、この章には書かれていません。同じ場面は『古エッダ』の「ファーヴニルの言葉」にもうたわれていますが、今回はその詩との照合は行っていません。

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