ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
フレイ
Freyr
ニョルズの息子で、フレイヤの兄弟。雨と日の光、大地の実りを治める。巨人の娘ゲルズを得るために剣を手放し、世界の終わりに炎の巨人スルトと戦って倒れる。
実りと平和の神
フレイはニョルズの息子で、フレイヤの兄弟である。『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」は、フレイを最も名高い神の一人とし、雨と日の光、そして大地の実りを治めると語る。豊かな季節と平和を願うときにはフレイに祈るのがよく、人々の繁栄もつかさどるという。『古エッダ』の「グリームニルの言葉」は、神々の住まいを数えるなかで、アールヴヘイムがフレイに与えられたとうたう。
「ロキの口論」では、テュールが、フレイは神々の住まいの勇士のなかで最もすぐれ、乙女も人の妻も傷つけず、縛られた者を解き放つ、とたたえる。
小人の宝
「詩語法」によれば、ロキが小人たちに作らせた宝のうち、船スキーズブラズニルはフレイのものとなった。帆を揚げればどこへ向かっても順風が吹き、使わないときは布のようにたたんで袋に入れておける。小人ブロックがフレイに贈った猪は、空も水もどんな馬よりよく走り、たてがみと剛毛の輝きでどんな闇も明るくした。バルドルの火葬には、フレイが「黄金のたてがみ」(「恐ろしい牙」とも)という猪に引かせた車で来たと「ギュルヴィたぶらかし」は語る。
ゲルズと剣
あるときフレイは、オーディンの高座フリズスキャールヴに座って世界を見渡し、北の巨人の国で、ギュミルの娘ゲルズが戸を開けるのを見た。その腕の輝きで空も海も照らされた。高座に座った思い上がりの報いとして、フレイは深い悲しみに沈み、口もきかず、眠りも飲みもしなくなった。
ニョルズに頼まれて訳を尋ねた従者スキールニルに、フレイは、彼女を得られなければ長くは生きられないと打ち明けた。スキールニルは求婚の使いを引き受けるかわりに、ひとりでに戦うフレイの剣を求め、フレイはそれを与えた。ゲルズは九夜ののちに会うと約束した。「ギュルヴィたぶらかし」はこの場所をバレイ、『古エッダ』の「スキールニルの旅」はバリの森と呼び、詩ではスキールニルが脅しと呪いの言葉でゲルズを承知させる。
剣を手放したため、フレイは巨人ベリと戦ったとき武器がなく、鹿の角でベリを殺した。
世界の終わり
世界の終わりの戦いで、フレイは炎の巨人スルトと戦い、激しい戦いのすえに倒れる。スキールニルに与えたあの剣を持っていないことが死の原因になる、と「ギュルヴィたぶらかし」は語る。「ロキの口論」でも、ロキはフレイに、ギュミルの娘を金で買い剣まで手放した、ムスペルの子らが攻めてくるときには武器なしで待つことになる、と言い放つ。
登場する物語
- アース神族とヴァン神族――最初の戦いと和平世界で最初の戦いは、二つの神の一族のあいだで起こった。焼かれても生き返る女、破られた神々の壁、人質の交換、そして和平のしるしの甕。資料ごとに少しずつ残された戦いと和解の物語を読む。
- フェンリルを縛った紐――テュールの右手日ごとに大きくなる狼フェンリルを、神々は鉄の戒めで縛ろうとしたが果たせない。最後に用いたのは、絹のように柔らかな紐と、一人の神が差し出した右手だった。
- バルドルの死――ヤドリギの矢不吉な夢を見たバルドルのため、フリッグはあらゆるものに彼を傷つけないと誓わせる。神々はその不死身を遊びにしたが、ただ一つ誓いを求められなかったヤドリギを、ロキが盲目のヘズに射させた。神々と人間に起きた最大の不幸と、その火葬までを語る。
- フレイヤとヒュンドラ――オッタルの系譜女神フレイヤは洞窟の女巨人ヒュンドラを起こし、お気に入りの若者オッタルの先祖を語らせる。金の猪に乗る女神と、皮肉を返す女巨人。長い系譜と小さな世界の予言のあと、二人は激しい言葉を交わして別れる。
- フレイとゲルズ――使者スキールニルの求婚世界を見渡す高座から巨人の娘ゲルズを見たフレイは、恋に苦しむ。馬と剣を借りた従者スキールニルは炎を越えて巨人の館へ行き、黄金の林檎と腕輪、剣の脅し、そして恐ろしい呪いの言葉で、ついに会う約束を取りつける。
- 神々の宝物が生まれた日――シヴの髪と小人の賭けロキがシヴの髪を切り落としたことから、小人たちの鍛冶場で神々の宝物が次々に生まれる。自分の首を賭けたロキと、ふいごを吹き続けた小人ブロック。最後に最もすぐれた宝と認められたのは、トールの槌だった。
- グリームニルの試練と王の結末オーディンとフリッグの賭けから、名を明かさない旅人グリームニルは王ゲイルロズに捕らえられ、二つの火のあいだで八夜を過ごす。一杯の角杯をくれた王子にだけ報い、神々と世界の秘密を語り終えたとき、客は自分の本当の名を告げる。
- ロキの口論――エーギルの宴の騒動海の巨人エーギルの館の宴に、追い出されたロキが戻ってくる。席を求めたロキは、神々と女神たちに次々と悪口を浴びせ、最後に現れたトールの槌の脅しの前で、ようやく館を去る。『古エッダ』の「ロキの口論」。
- 最後の戦い――神々の黄昏ヘイムダルの角笛が神々を呼び起こし、ヴィーグリーズの野で最後の戦いが始まる。オーディンは狼に呑まれ、トールは大蛇と相打ちになり、フレイは剣のないまま炎の巨人に倒れる。最後にスルトの火が世界を焼きつくす。
関連する事典項目
出典
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
- 原題
- Gylfaginning
- 該当箇所
- 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」
- 原題
- Skáldskaparmál
- 該当箇所
- 作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため一部本文を確認。グングニルと神器の製作はこの版の第35章。フロールヴ・クラキは第43章。個別記事の照合は別に記録する。
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。
