NORSE · STORY

フレイとゲルズ――使者スキールニルの求婚

世界を見渡す高座から巨人の娘ゲルズを見たフレイは、恋に苦しむ。馬と剣を借りた従者スキールニルは炎を越えて巨人の館へ行き、黄金の林檎と腕輪、剣の脅し、そして恐ろしい呪いの言葉で、ついに会う約束を取りつける。

高座から見えた乙女

ニョルズの息子フレイは、ある日、フリズスキャールヴという高座に座って、すべての世界を見渡した。巨人の国をのぞきこんだとき、父の家から自分の部屋へ歩いていく美しい乙女が目に入った。たちまちフレイは、重い恋の病にかかってしまった。

フレイにはスキールニルという従者がいた。フレイの父ニョルズは、スキールニルに言った。息子のところへ行って話を聞いてきてくれ。賢いあの子が、誰のためにこれほど思い悩んでいるのかを。

スキールニルは、ひどい言葉が返ってくるだろうと案じながらも、フレイのもとへ行った。

フレイの打ち明け話

スキールニルは尋ねた。神々のなかで最もすぐれたフレイよ、どうか話してください。なぜこの広い館に、何日もひとりきりで座っておられるのですか。

フレイは答えた。この大きな悲しみを、どう話せばよいだろう。日の光は毎日昇ってくるが、わたしの思いを照らしてはくれない。

スキールニルは言った。わたしに話せないほどの思いではないでしょう。わたしたちは若いころ、いっしょに育ったのですから、互いに信じ合えるはずです。

フレイは打ち明けた。ギュミルの家から、いとしい乙女が出てくるのを見た。その腕は輝き、その光で海も空もすべて照らされた。昔から、どんな男にとっても、これほどいとしい乙女はいなかった。けれども神々も、エルフたちも、わたしたちが結ばれることを許しはしないだろう。

馬と剣

スキールニルは言った。では、闇の中も、魔法のゆらめく炎の中も駆けぬける馬をください。それに、恐ろしい巨人たちを相手に、ひとりでに戦う剣も。

フレイは言った。闇と炎を越える馬を与えよう。それに剣も。ふさわしい勇士が手にすれば、ひとりでに戦う剣だ。

スキールニルは馬に語りかけた。外は暗い。荒れた山々を越え、巨人の砦へ行く時が来た。わたしたちは二人とも帰ってくるか、二人とも恐ろしい巨人に捕らえられるかだ。

巨人の館の門

スキールニルは巨人の国のギュミルの家へ馬を進めた。ゲルズの館を囲む柵の門の前には、猛々しい犬がつながれていた。

スキールニルは、丘の上に座って道を見張っている牧人のところへ行き、尋ねた。ギュミルの犬たちを越えて、どうすればあの乙女と話ができるだろう。

牧人は言った。おまえは死ぬ定めの者か、それとももう死んでいるのか。ギュミルのよい娘と言葉を交わすことなど、おまえには決してできまい。

スキールニルは答えた。旅をしなければならない者には、嘆くより勇気のほうがよい。わたしの命の長さは、もう決まった日まで定められているのだ。

館の中では、ゲルズが言った。あの大きな音は何。地面が揺れ、ギュミルの家がまわりで震えている。

侍女が答えた。馬から飛び降りた人が外に立っています。馬を放して草を食べさせています。

ゲルズは言った。その人を館に入れて、よい蜜酒を飲ませなさい。でも、外に立っているのは、わたしの兄弟を殺した者ではないかと恐ろしい。

ゲルズは尋ねた。あなたはエルフの一族か、神々の子か、それとも賢いヴァン神族か。どうしてひとりで燃えさかる炎を越え、わたしたちの家を見に来られたのか。

スキールニルは答えた。わたしはエルフでも、神々の子でも、賢いヴァン神族でもない。それでも、ひとりで炎を越えてきたのだ。

黄金の林檎と腕輪

スキールニルは言った。ここに黄金の林檎が十一個ある。これをあなたに与えよう。そのかわりに、フレイこそが最もいとしい人だと約束してほしい。

ゲルズは言った。誰に望まれても、その十一個の林檎は受け取らない。生きているかぎり、フレイとわたしが一つの住まいで暮らすことはない。

スキールニルは言った。では、オーディンの息子とともに焼かれた腕輪をあげよう。九夜ごとに、同じ重さの腕輪が八つ、そこから滴り落ちる。

ゲルズは言った。その腕輪もいらない。オーディンの息子とともに焼かれたものであっても。ギュミルの家には金が不足していない。父の富はたっぷりあるのだから。

剣の脅し

スキールニルは言った。乙女よ、わたしが手にしている、この鋭く輝く剣が見えるか。言うとおりにしなければ、この剣でおまえの首を切り落とす。

ゲルズは言った。誰のためであれ、力ずくで心を動かされはしない。それに、ここであなたを見つけたら、ギュミルは喜んで戦いを挑むだろう。

スキールニルは言った。この剣の刃の前には、あの老いた巨人も屈するだろう。おまえの父は死ぬ運命なのだ。

杖の呪い

それでもゲルズが従わないので、スキールニルは魔法の杖でゲルズを打ち、呪いの言葉を告げはじめた。

この杖でおまえを打ち、わたしの思いどおりにさせよう。おまえは、人の子らが二度と見ることのない所へ行く。鷲の丘に座りつづけ、ヘルの門を見つめて暮らす。おまえの食べ物は、人間にとっての蛇よりもいとわしいものになる。

おまえが外へ出れば、恐ろしい姿に、巨人フリームニルも立ちすくんで見つめるだろう。怒りと憧れ、縛めと憤り、涙と苦しみがおまえのものとなる。巨人の住まいで、いやしい者たちが毎日おまえを苦しめる。喜びのかわりに悲しみを、涙とともに嘆きを味わうがいい。

三つの頭をもつ巨人とずっと暮らすか、さもなければ夫を知らずに過ごせ。屋根裏に投げ捨てられて押しつぶされた、あざみのようになれ。

オーディンは怒り、神々のなかで最もすぐれた者が怒っている。フレイはおまえの敵となるだろう。霜の巨人たちよ、巨人たちよ、スットゥングの息子たちよ、そして神々よ、聞くがいい。この乙女が男たちと出会うことを、わたしは禁じる。

フリームグリームニルという巨人が、ヘルの戸口の深みでおまえを手に入れる。木の根元で、いやしい者たちが汚れた角杯をおまえに差し出すだろう。それよりよい飲み物は、決して見つからない。

わたしはおまえに呪いを書き、三つのルーンを添える。憧れと、狂気と、欲情のルーンだ。だが書いたものは、必要があれば消すこともできる。

森バリの約束

ゲルズは言った。それより、ようこそと言わせてください。この霜の杯に満たした蜜酒をお取りなさい。まさか、ヴァン神族の誰かを、これほど愛するようになるとは思わなかった。

スキールニルは言った。帰る前に、確かな知らせを聞いておかねばならない。ニョルズの力ある息子と、いつ会ってくれるのか。

ゲルズは答えた。バリという、二人とも知っている静かで美しい森があります。九夜ののち、そこでゲルズはニョルズの息子に喜びを与えましょう。

スキールニルは馬で家へ帰った。フレイは外に立って待っていて、知らせを求めた。スキールニル、鞍を外す前に、一歩でも進む前に教えてくれ。巨人の住まいで、おまえは何をしてきた。おまえとわたしを喜ばせる知らせはあるか。

スキールニルは、ゲルズの言葉をそのまま伝えた。バリの森で、九夜ののちに。

フレイは言った。一夜は長い。二夜はなお長い。どうして三夜を耐えられよう。ひと月でさえ、いまの半夜の待ち遠しさより短く思えたことがあったのに。


出典について:本稿は『古エッダ』の「スキールニルの旅」(スキールニルの言葉)に基づく再話です(英訳は H・A・ベロウズ訳、1923年)。詩の部分はすべて台詞で、出来事の流れは写本の散文がつないでいます。ゲルズの名は詩のなかで明かされ、本稿では題と要約で先に示しました。ゲルズが心を変えた理由は、詩には述べられていません。訳者ベロウズの注によれば、「オーディンの息子とともに焼かれた腕輪」は、小人がオーディンのために作り、バルドルの火葬の薪に置かれた腕輪ドラウプニルを指します(物語「神々の宝物が生まれた日――シヴの髪と小人の賭け」)。ゲルズの言う「兄弟を殺した者」が誰を指すかは、はっきりしません。

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