ENCYCLOPEDIA · 北欧神話

ブリュンヒルド

Brynhildr

ブズリ王の娘で、アトリの姉妹。オーディンの怒りで眠らされ、炎に囲まれた山上でシグルズに目覚めさせられた戦乙女。のちに欺かれてグンナルの妻となり、シグルズの死を求めて、自らも命を絶った。

山上の眠り

『ヴォルスンガ・サガ』によれば、シグルズはヒンドフェルの山上で、天まで燃え上がる炎の光と、盾を掛けめぐらせた砦を見つけた。中で武装して眠っていたのがブリュンヒルドである。鎖帷子を切り裂かれて目覚めたブリュンヒルドは、自分が眠っていたわけを語った。二人の王が戦ったとき、オーディンが勝利を約束していた年老いたヘルム・グンナルを、自分が戦いで倒した。オーディンはその報いに眠りの棘を刺し、もう勝利は得られず嫁がされるだろうと言った。けれども自分は、恐れを知る者とは決して結婚しないと誓ったのだという。

ブリュンヒルドはシグルズにルーンの知恵と多くの忠告を授け、二人は互いに誓いを交わした。英訳者がこの場面に挿入した詩節の出所である『古エッダ』の「シグルドリーヴァの言葉」では、眠る乙女はシグルドリーヴァと呼ばれる。サガは彼女をブリュンヒルドとしているが、両者が同じ人物かどうかを資料は確かにしていない。

一族とフリュムダリル

ブリュンヒルドはブズリ王の娘で、荒々しいアトリ王の姉妹である。姉妹のベックヒルドは首長ヘイミルの妻で、ブリュンヒルドはヘイミルの養女として育った。ベックヒルドは家にとどまって手仕事を学んだが、ブリュンヒルドは兜と鎖帷子をつけて戦に出たので、そう呼ばれたという。

フリュムダリルのヘイミルの館で、ブリュンヒルドはシグルズの偉業を布に縫いこんでいた。訪ねてきたシグルズと二人はふたたび誓いを交わしたが、ブリュンヒルドは、シグルズがギューキの娘グズルーンと結婚することを予言した。

欺かれた婚礼

ブリュンヒルドは、館を囲む炎を越えてくる者だけを夫に選ぶと定めていた。ギューキの息子グンナルが求婚に来たが炎を越えられず、グンナルの姿になったシグルズが越えた。ブリュンヒルドは誓いに従ってグンナルの妻になった。サガでは、ブリュンヒルドとシグルズの娘アスラウグがヘイミルのもとで育てられることも語られる。

のちにグズルーンとの言い争いで、炎を越えたのがシグルズだったと知ったブリュンヒルドは、深く悲しみ、グンナルにシグルズを殺さなければ自分は去ると迫った。シグルズが殺されると、ブリュンヒルドは誓いを破ったギューキの一族をなじり、生きてくれというグンナルの願いを拒んで、剣で自らを刺した。サガでは、シグルズの亡骸を焼く薪の上で、ブリュンヒルドもそのそばで焼かれた。

詩に描かれるブリュンヒルド

『古エッダ』の「ブリュンヒルドのヘル行き」では、火葬の薪は二つ作られ、車でヘルの国へ向かうブリュンヒルドが、道をはばむ女巨人に自分の一生を語る。そこでは彼女はフリュムダリルで「兜のヒルド」と呼ばれていたと言い、炎を越えた夜を八夜とする。「オッドルーンの嘆き」では、アトリの姉妹オッドルーンが、父ブズリがブリュンヒルドに兜をかぶらせ、願いの乙女――ヴァルキューリア――にしたと語る。

登場する物語

関連する事典項目

神話事典神々・英雄・怪物・武器・道具・場所を横断して探す。

出典

  1. 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
    原題
    The Poetic Edda
    該当箇所
    作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
    参照訳
    Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)

    2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。

  2. 『ヴォルスンガ・サガ』
    原題
    Völsunga Saga: The Story of the Volsungs and Niblungs
    該当箇所
    I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
    参照訳
    Eiríkr Magnússon and William Morris; edited by H. Halliday Sparling, Walter Scott (1888)

    2026-10-28、章立てと目次を確認。サガ本文を全章照合した記録ではない。エッダの英雄詩や大陸のニーベルンゲン伝承を同一版として混ぜない。