NORSE · STORY
アトリとの結婚と兄弟への招き
忘れ薬を飲まされたグズルーンは、意に反してフン族の王アトリに嫁ぐ。黄金を狙うアトリは兄弟たちを宴に招き、グズルーンは狼の毛を結んだ腕輪で警告したが、使者はルーンを書き換えていた。妻たちの不吉な夢を退け、グンナルとホグニは旅立つ。
デンマークでの日々
シグルズの死を知った人々は皆、彼ほどの者はこの世に残っていない、二度と生まれることもないと言った。
ある日、グズルーンは部屋に座って語った。シグルズがいたころの暮らしのほうがよかった。あの人は、鉄の上の金のように、野の草の上の葱のように、獣の上の牡鹿のように、ほかの男たちの上にそびえていた。兄弟たちはそれをねたみ、あの人を殺すまで眠れなかった。主人がひどい傷を負ったのを見て、グラニは大きく騒ぎ、わたしが人に話すように話しかけると、地面にうなだれた。シグルズが殺されたことを知っていたのだ(物語「シグルズを悼むグズルーン」)。
それからグズルーンは荒れた森へ入り、まわりで狼が吠えるのを聞いて、死んだほうがましだと思った。やがてデンマークのアールヴ王の館に着き、ハーコンの娘ソーラのもとで七つの季節を過ごした。二人は刺繍に、多くの偉業や、王たちの武具、シグムンド王の船の航海を縫いこんだ。こうしてグズルーンの悲しみは、いくらか和らいだ。
忘れ薬と結婚
グリームヒルドは娘の居場所を聞きつけ、息子たちに、グズルーンの息子と夫のことで償いをすべきだと言った。グンナルは、黄金で償おうと言った。
一行は堂々と旅支度を整え、五百人で出向いた。グリームヒルドも、自分がいなければうまくいかないと言ってついてきた。兄弟たちは妹にやさしく語りかけ、よい贈り物を選んだが、グズルーンは誰も信じなかった。
そこでグンナルは、害のあるものを混ぜた飲み物をグズルーンに飲ませた。それを飲むと、グズルーンは兄弟たちの罪をもう覚えていなかった。その中には、大地と海の力と、息子の血が混ぜられていた。角杯には、あらゆる文字が刻まれ、血で赤く塗られていた。
心がなごむと、グリームヒルドは言った。娘よ、父の遺産として金とあらゆるよいものをあげよう。これでおまえの夫の償いとする。そしておまえは力ある王アトリに嫁ぎ、その権勢の主となるのだ。
グズルーンは答えた。アトリ王とは決して結婚しません。わたしたちのあいだに子をもうけるのは、ふさわしくありません。あの人はあなたの一族に災いをもたらし、自分の息子たちにもひどいことをして、やがて恐ろしい復讐を受けるでしょう。
グリームヒルドは怒り、言うとおりにすれば大きな名誉と自分たちの友情を与え、ヴィンビョルグとヴァルビョルグの地も与えると言った。その言葉にはあまりに強い力があったので、そのとおりにするしかなかった。
グズルーンは言った。意に反しても、そうなるしかないのですね。それはわずかな喜びと、大きな悲しみのためになるでしょう。
一行は陸と海を何日も旅して、高い館に着いた。盛大な宴が開かれ、アトリはグズルーンとの婚礼の杯を飲んだ。けれども、グズルーンの心が彼に笑いかけることは一度もなく、二人の暮らしは少しも睦まじくなかった。
アトリの夢
ある夜、アトリは目を覚まして、グズルーンに言った。おまえが剣でわたしを刺し通す夢を見た。
グズルーンは、鉄の夢は火を表す、あなたが自分を誰より偉いと思っている思い上がりのせいだろう、と解いた。
アトリはほかの夢も語った。二本のななかまどの若木が根こそぎにされ、血に染まって長椅子に運ばれ、わたしは食べるように言われた。手から飛び立った二羽の鷹が飢えたままヘルへ行き、その心臓が蜜と混ぜられて、わたしはそれを食べた。二匹のかわいい子犬が目の前で鳴き、わたしは気が進まないのにその肉を食べた。そして、風呂に入っていると、人々がわたしを殺す相談をしていた。
グズルーンは言った。どれもよい夢ではありません。けれども、そのとおりになるでしょう。あなたの息子たちは死に近づいていて、わたしたちには重いことがたくさん降りかかるでしょう。
黄金への招き
アトリは、シグルズが持っていたあの豊かな黄金がどこにあるかを考えはじめた。いまはグンナル王と兄弟たちがその主だった。アトリは家来たちと相談し、ヴィンギという男を長とする使者を送って、ギューキの息子たちを大きな宴に招くことにした。
王妃グズルーンは、このたくらみに気づき、兄弟たちを欺くつもりではないかと疑った。そこでルーンを刻み、金の腕輪に狼の毛を一本結びつけて、王の使者に渡した。ところがヴィンギは、上陸する前にルーンを見て、それを書き換えた。グズルーンがルーンで、兄弟たちにアトリ王に会いに来るよう頼んでいるかのように見せかけたのである。
グンナル王の館で、ヴィンギは言った。アトリ王は、あなたがたが栄誉をもって訪ねてくることを望み、兜や盾、剣や鎖帷子、金や立派な衣、馬や軍勢、広い領地を差し出すと言っている。
グンナルはホグニに言った。わたしたちほど黄金をもつ王はいない。かつてグニタヘイズにあった宝がすべてあるのだから。
ホグニは言った。あの人がこんな招きをするのは珍しい。行くのは賢くない。王が送ってきた品の中に、金の腕輪に結ばれた狼の毛があった。グズルーンは、あの人が狼のような心でいると思って、わたしたちに来てほしくないのだろう。
けれどもヴィンギは、グズルーンが送ったというルーンを見せた。その夜、兄弟たちは遅くまで飲み、すっかり酔った。ヴィンギは言った。アトリ王は年をとり、足も重く、国を守るには年老いすぎた。息子たちはまだ若く、何の役にも立たない。だから、彼らが若いうちに、国をあなたがたに治めさせたいのだ。
グンナルは酔っていたうえに、大きな支配を差し出され、定められた運命にも逆らえず、行くと約束した。ホグニは言った。いったん与えた言葉は守るしかない。わたしもついて行こう。だが、この旅はまったく気が進まない。
妻たちの夢
ホグニの妻コストベラは、女たちのなかで最も美しく、賢かった。彼女はルーンを読み、文字の下にほかのことが刻まれていて、欺きのルーンだと見抜いた。翌朝、コストベラはホグニに言った。
行ってはいけません。あのルーンを、妹があなたがたに来いと頼んでいると読むなら、あなたは鋭い読み手ではない。あれほど賢いグズルーンが刻み間違えたとは思えない。その下にあるのは、あなたがたの破滅です。文字が欠けているか、誰かが細工をしたのです。
コストベラは夢を語った。激しい川が館に流れこみ、梁を砕いた。もう一つの川が館の高座を引き裂き、あなたがた兄弟の脚を折った。あなたの外套が燃え、炎が館の上まで上がった。熊が入ってきて王の座を壊し、わたしたち皆を口にくわえた。鷲が広間に舞い降り、わたしたち皆に血を浴びせた。あの鷲はアトリ王の分身だと思う。
ホグニはそれをすべて別の意味に解いた。川は道中の草地、外套の夢はここにある染めた衣が燃えること、熊は嵐、鷲は宴のために屠る牛のこと、と。
グンナルの妻グラウムヴォルも夢を語った。血に濡れた剣が館に運ばれてきて、あなたを刺し通し、剣の両端で狼が吠えていた。そして、重く沈んだ女たちが入ってきて、あなたを伴侶に選んだ。グンナルは言った。誰も自分の定められた日々を変えることはできない。わたしの時は短いのかもしれない。
旅立ちとヴィンギの最期
朝になると、兄弟たちは旅に出ようとした。止めようとする者もいた。グンナルは、大樽から上等の葡萄酒を飲ませてくれと言った。これがわたしたちの最後の宴になるかもしれない。わたしたちが死ねば、あの年老いた狼が黄金を手にするだろう。
家の者たちは皆、泣きながら一行を見送った。ホグニの息子ソーラルとスネーヴァル、コストベラの兄弟で勇士のオルクニングがともに行った。
一行はあまりに激しく漕いだので、竜骨の半分ほどが船から外れかけ、櫂受けも船べりも壊れた。陸に着くと船をつなぎ、暗い森を馬で進んだ。やがて王の大軍が見え、武器の音が響き、城の門はどこも人で埋まっていた。
門は閉ざされていた。ホグニは門を打ち破り、一行は城の中へ馬で入った。
ヴィンギは言った。そんなことはしないほうがよかった。ここで待っていろ。おまえたちの絞首台を探してきてやる。わたしはやさしく甘い言葉で招いたが、その下には悪がひそんでいたのだ。
ホグニは答えた。そんなことでひるみはしない。戦いが始まって、わたしたちがしり込みしたことはほとんどない。わたしたちを脅しても無駄だ。おまえこそ悪い運命をこしらえた。
そう言うと、彼らはヴィンギを地面に打ち倒し、斧の槌で打って殺した。
出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第33〜36章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。グズルーンがデンマークで過ごした日々と忘れ薬の場面は、『古エッダ』の「グズルーンの歌 第二」にも、グズルーン自身の回想として語られています。夢の多くは長いため、一部を要約しました。
出典・資料
- 『ヴォルスンガ・サガ』 — I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
