ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
グラム
Gramr
シグムンドが樫の木から抜いた剣で、のちにレギンがそのかけらから鍛え直し、シグルズの剣となった。シグルズはこの剣で竜ファーヴニルとレギンを倒した。
シグムンドの剣
『ヴォルスンガ・サガ』によれば、ヴォルスング王の館に入ってきた片目の見知らぬ老人が、広間の樫の木に剣を柄まで突き刺し、これを抜いた者に贈ると言って去った。誰も抜けなかったその剣を、ヴォルスングの息子シグムンドだけがたやすく引き抜いた。英訳の注は、この老人をオーディンとしている。
シグムンドの最後の戦いで、青い外套の片目の男が槍斧を向けると、シグムンドの剣はそれに当たって二つに折れた。死に際のシグムンドは妃ヒョルディースに、剣のかけらを大切に保てばお腹の子のために「グラム」という名剣が作られると告げた。サガの章題も、このかけらを「剣グラムのかけら」と呼んでいる。
打ち直されたグラム
のちにレギンがシグルズのために鍛えた剣は、二度とも金床に打ちつけると折れた。シグルズが母から父の剣のかけらを受け取ってくると、レギンはそれで剣を鍛え直した。シグルズがその剣で金床を打つと、金床は台まで断ち割られたが、剣は欠けも折れもしなかった。川上へ投げた羊毛の房は、流れのなかで刃に触れて二つに断たれた。
シグルズはグラムで父の仇のフンディングの息子たちを討ち、穴に隠れて竜ファーヴニルの左の肩の下を突き、そののちレギンの首をはねた。ブリュンヒルドのもとでグンナルの姿をとって三夜を過ごしたときには、抜いた剣グラムを二人のあいだに置いた。
登場する物語
- 剣グラムとグリーピルの予言レギンの鍛えた剣は二度とも金床で折れた。シグルズが母から父の折れた剣のかけらを受け取ると、レギンは刃に炎が走るような剣を鍛えあげる。剣グラムを得たシグルズは、伯父グリーピルを訪ねて自分の運命のすべてを聞く。
- 鳥の言葉とレギンの結末竜の心臓を焼いていたシグルズは、指についた血をなめた途端、鳥たちの言葉が分かるようになる。鳥たちはレギンのたくらみを告げ、炎の館に眠る乙女のことを歌った。シグルズはレギンを討ち、竜の黄金を馬グラニに積んで旅立つ。
- シグムンドの最後の戦いと折れた剣老王シグムンドは、若い求婚者をしりぞけて自分を選んだヒョルディースを妻に迎える。だが恨んだリュングヴィ王の大軍との戦いで、片目の男の槍斧に剣を砕かれ、倒れる。死の床の王は、身ごもった妻に剣のかけらを託した。
- シグルズ、グズルーン、炎を越える婚礼ギューキ王の娘グズルーンは不吉な夢を見て、ブリュンヒルドにその意味を聞く。やがて館に来たシグルズは、王妃グリームヒルドの忘れ薬でブリュンヒルドを忘れ、グズルーンと結婚する。そしてグンナルの姿になり、炎の館のブリュンヒルドを義兄のために勝ち取ってしまう。
- フリュムダリルでの出会いと約束竜を描いた金の武具に身を包んだシグルズは、首長ヘイミルの館に客となる。ある日、鷹を追って塔へ上ると、自分の偉業を布に縫いこむブリュンヒルドがいた。「あなたはギューキの娘グズルーンと結婚する」と告げる乙女に、シグルズは誓いを重ねる。
- 王妃たちの争いとシグルズの死川辺の言い争いで、炎を越えたのはシグルズだったという秘密が露見する。欺かれたと知ったブリュンヒルドは夫グンナルにシグルズの死を求め、誓いに縛られない弟グットルムが眠るシグルズを刺す。英雄の死と、そのそばで焼かれることを選んだブリュンヒルドの最期。
- 父の仇を討つシグルズ――嵐の海の老人剣グラムを手にしたシグルズは、竜より先に父シグムンドの仇を討つと決め、大船団で海へ出る。嵐のなか岬の岩から乗りこんだ謎の老人は、戦いの前兆を語って消えた。シグルズはフンディングの息子たちを討ち果たす。
関連する事典項目
出典
- 『ヴォルスンガ・サガ』
- 原題
- Völsunga Saga: The Story of the Volsungs and Niblungs
- 該当箇所
- I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
- 参照訳
- Eiríkr Magnússon and William Morris; edited by H. Halliday Sparling, Walter Scott (1888)
2026-10-28、章立てと目次を確認。サガ本文を全章照合した記録ではない。エッダの英雄詩や大陸のニーベルンゲン伝承を同一版として混ぜない。
