ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
ヴォルスング一族
Völsungar
オーディンの息子と呼ばれたシギに始まる英雄の一族。ヴォルスング王、シグムンド、シグルズへと続き、その運命にはたびたびオーディンが関わる。
シギからヴォルスングへ
『ヴォルスンガ・サガ』は、オーディンの息子と呼ばれたシギの話から始まる。奴隷を殺して国を追われたシギを、オーディンは軍船のところまで送り出し、シギは戦に勝ち続けて国を得た。その子レーリルには長く子がなかったが、神々に祈ると、オーディンとフレイヤが聞き入れ、巨人フリームニルの娘が林檎を王の膝に落とした。妃は林檎を食べて身ごもり、生まれたのがヴォルスングである。
ヴォルスング王は、林檎を運んだ巨人の娘リョーズを妻とし、十人の息子と一人の娘が生まれた。長男シグムンドと娘シグニューは双子で、子らのなかで最もすぐれていた。
一族の物語
シグニューが嫁いだゴートランドのシゲイル王は、ヴォルスング王と息子たちを討ったが、シグムンドだけが生きのび、シグニューとのあいだの子シンフィヨトリとともに仇を返した。シグムンドの子には、英雄詩に歌われるヘルギと、竜ファーヴニルを倒したシグルズがいる。サガでは、オーディンが樫の木に剣を刺してシグムンドに授け、最後の戦いではその剣を折る。
物語のなかで人々はしばしば、ヴォルスング一族がまだ絶えていないと名のる。シグムンドは仇のシゲイルの館に火を放ったとき、またシグルズは父の仇のフンディングの息子たちを攻めるとき、そう告げた。『古エッダ』の「ヒュンドラの歌」は、英雄たちの系譜を数えるなかで、ファーヴニルを殺したシグルズをヴォルスングの血を引く者として挙げる。
登場する物語
- 眠る戦乙女とシグルズヒンドフェルの山上に燃える火の中、盾をめぐらせた砦で、武装したまま眠る者がいた。シグルズが鎖帷子を裂くと、目覚めたのはオーディンに眠らされた戦乙女ブリュンヒルドだった。乙女はルーンの知恵と生きるための忠告を授け、二人は誓いを交わす。
- シンフィヨトリの死――三度の角杯恋の争いで王妃ボルグヒルドの兄弟を殺したシンフィヨトリに、王妃は葬宴で毒の角杯を三度差し出す。二度は父シグムンドが代わりに飲みほしたが、三度目に息子は倒れた。亡骸を抱いた父の前に、小舟の渡し守が現れる。
- ヘルギとシグルーン――戦いと婚姻ノルンたちに運命を織られて生まれたシグムンドの子ヘルギは、十五歳でフンディング王を討つ。望まぬ婚約から逃れたいヴァルキューリアのシグルーンに頼まれ、ヘルギは大船団で嵐の海を渡り、フレカステインの戦いに勝つ。けれども、その勝利には大きな代償があった。
- シギ、レーリル、ヴォルスング――英雄の一族の始まりオーディンの息子と呼ばれたシギは、狩りで負けた奴隷を殺して国を追われ、やがてフン族の国の王となる。その子レーリルは父の仇を討ち、神々の林檎によって世継ぎを授かる。こうして生まれたヴォルスングから、英雄の一族の物語が始まる。
- シグムンドの最後の戦いと折れた剣老王シグムンドは、若い求婚者をしりぞけて自分を選んだヒョルディースを妻に迎える。だが恨んだリュングヴィ王の大軍との戦いで、片目の男の槍斧に剣を砕かれ、倒れる。死の床の王は、身ごもった妻に剣のかけらを託した。
- シグニューの復讐とシンフィヨトリ父ヴォルスング王と兄弟たちを夫シゲイルに殺されたシグニューは、ただ一人生き残った兄シグムンドを森にかくまい、復讐の時を待つ。そのために生まれた息子シンフィヨトリ、狼の皮の試練、塚からの脱出、燃える館。苛烈な復讐の物語。
- 父の仇を討つシグルズ――嵐の海の老人剣グラムを手にしたシグルズは、竜より先に父シグムンドの仇を討つと決め、大船団で海へ出る。嵐のなか岬の岩から乗りこんだ謎の老人は、戦いの前兆を語って消えた。シグルズはフンディングの息子たちを討ち果たす。
- シグルズの成長と馬グラニ亡き父シグムンドの子シグルズは、デンマークのヒャールプレク王の館で育ち、鍛冶の名手レギンに学ぶ。森で出会った長いひげの老人の助けで、スレイプニルの血を引く馬グラニを選んだシグルズに、レギンは竜ファーヴニルの黄金の話をもちかける。
関連する事典項目
出典
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。
- 『ヴォルスンガ・サガ』
- 原題
- Völsunga Saga: The Story of the Volsungs and Niblungs
- 該当箇所
- I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
- 参照訳
- Eiríkr Magnússon and William Morris; edited by H. Halliday Sparling, Walter Scott (1888)
2026-10-28、章立てと目次を確認。サガ本文を全章照合した記録ではない。エッダの英雄詩や大陸のニーベルンゲン伝承を同一版として混ぜない。
