NORSE · STORY

父の仇を討つシグルズ――嵐の海の老人

剣グラムを手にしたシグルズは、竜より先に父シグムンドの仇を討つと決め、大船団で海へ出る。嵐のなか岬の岩から乗りこんだ謎の老人は、戦いの前兆を語って消えた。シグルズはフンディングの息子たちを討ち果たす。

船団の出発

シグルズは、育ててくれた王たちのもとへ行って言った(物語「剣グラムとグリーピルの予言」)。

わたしはしばらくあなたがたのもとで暮らし、深い愛と多くの贈り物と、ふさわしい敬意を受けてきました。そのお礼をしなければなりません。けれども、いまは国を出て、フンディングの息子たちに会いに行きたいのです。ヴォルスング一族がみな死に絶えたわけではないと、思い知らせてやるために。それにはあなたがたの力を借りたい。

王たちは、望むものは何でも与えようと言った。大軍が集められ、船も武具も念入りに整えられ、この旅が誰よりも堂々としたものになるよう支度された。シグルズ自身は、いちばん大きく立派な竜頭の船の舵を取った。帆は美しく飾られ、見るからにすばらしかった。

嵐と岬の男

船団は思うままの風を受けて進んだ。けれども数日たつと、海に大嵐が起こった。波は、人の血の泡のように見えた。それでもシグルズは、帆がどれほど裂けようとも縮めるなと言い、むしろ前より高く張らせた。

船団がある岬の岩のそばを通りすぎるとき、一人の男が船に呼びかけ、この船団の長は誰かと尋ねた。いまの若者たちのなかで最も名高い、シグムンドの子シグルズだと告げられると、男は言った。

誰もが口をそろえて、王の息子たちのなかに彼に比べられる者はいないと言う。どうか何隻かの船の帆を縮めて、わたしを乗せてくれないか。

名を尋ねられると、男は歌った。わたしはフニカルと呼ばれた。フギンを喜ばせ、戦いに出たときには。輝くヴォルスングの子よ。いまは、岩の上のこの男を、フェングとも、フィョルニルとも呼ぶがいい。おまえたちといっしょに行きたいのだ。

一行は陸へ寄せ、男を船に乗せた。

戦いの前兆

シグルズは尋ねた。フニカルよ、教えてくれ。神々の運命と、人の吉凶をよく知るあなたなら分かるだろう。剣の刃がまわりを飛び交う戦いのとき、何がいちばんよい前兆となるのか。

フニカルは答えた。剣が飛び交うとき、それと分かればよい前兆はたくさんある。

一つは、黒い翼の鴉。戦場で武器を振るう者にとって、よい連れである。

二つめは、長い道へよく身支度をして出かけるとき、前庭に名誉を求めて立つ二人の男を見ること。

三つめは、とねりこの枝の下で狼が吠えるのを聞くこと。それを目の前に見て進めば、兜の戦士たちとの戦いで、よい運に恵まれる。

戦いのとき、低く遅く輝く「月の妹」――太陽――に顔を向けて戦ってはならない。剣の戦いの真ん中を最もよく見通し、斜めの隊列を最もよく組む者が勝つのだ。

戦いに出るとき、足をつまずかせるのは大きな災いである。両側には、人を傷つけたがる、たくらみ深い守り霊たちがついているのだから。

戦士はみな、髪をよくとかし、体をよく洗い、朝の食事を欠かしてはならない。夕べに何が起こるかは、誰にも分からないのだから。

フンディングの息子たちとの戦い

やがて嵐は静まり、一行はフンディングの息子たちの国に着いた。すると、フィョルニルは消えてしまった。

シグルズの軍は火と剣を放ち、人々を殺し、住まいを焼き、行く先々を荒らした。大勢の人々がリュングヴィ王のもとへ逃げていき、知らせた。国に戦士の軍が入りこみ、聞いたこともないほどの怒りと勢いで進んでいる。もうヴォルスング一族を恐れることはないと言ったフンディングの息子たちは、先が見えていなかった。シグムンドの子シグルズが、軍の長として来たのだ、と。

リュングヴィ王は国じゅうに戦の知らせを回した。逃げる気はなく、助けてくれる者をみな集めた。そして兄弟たちとともに大軍を率いてシグルズを迎え撃ち、すさまじい戦いが起こった。槍や矢が空に飛び、斧が打ちこまれ、盾は割れ、鎖帷子は裂け、兜は砕け、頭蓋は割られ、多くの者が冷たい大地に倒れた。

戦いが長く続いたとき、シグルズは旗の前に進み出た。名剣グラムを手に、人も馬も打ち倒し、両腕を肩まで血に染めて、最も人の多いところを突き進んでいった。シグルズの行く先では人々が後ずさりし、兜も鎖帷子も彼の前では役に立たなかった。誰も、これほどの者を見たことがないと思った。

フンディングの息子たちが、先頭にいるシグルズに向かってきた。シグルズはリュングヴィ王に打ちかかり、兜も頭も、鎖帷子を着た体も、まっすぐに切り下げた。続いてその兄弟ヒョルヴァルズを二つに断ち、生き残っていたほかのフンディングの息子たちも、その家来の大半とともにすべて討ちとった。

ファーヴニルへ

シグルズは見事な勝利と、たくさんの富と、大きな誉れを手にして帰った。国では、彼の帰りを祝って宴が用意された。

シグルズが帰ってまもなく、レギンが話しにきて言った。これで父上と一族の仇を討ったのだから、約束どおり、ファーヴニルの頭を垂れさせる気になっただろうな。

シグルズは答えた。約束したとおりにしよう。一度も忘れたことはない。


出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第17章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。フニカル(フィョルニル)が誰なのかは、サガには書かれていません。英訳の注によれば、フニカルとシグルズの問答の詩句は、英訳者が『古エッダ』の「レギンの言葉」から補って挿入したものです。「守り霊」(ディース)は、注によれば、人の誕生から死までつき従う存在を指します。

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