NORSE · STORY
鳥の言葉とレギンの結末
竜の心臓を焼いていたシグルズは、指についた血をなめた途端、鳥たちの言葉が分かるようになる。鳥たちはレギンのたくらみを告げ、炎の館に眠る乙女のことを歌った。シグルズはレギンを討ち、竜の黄金を馬グラニに積んで旅立つ。
兄弟を殺されたレギン
ファーヴニルが死ぬと(物語「シグルズと竜ファーヴニル」)、レギンがシグルズのもとへやって来て言った。
ようこそ、わが主よ。ファーヴニルを殺すという見事な勝利をあげたな。これまで誰ひとり、あれの通り道に立ち向かえなかったのに。この名高い行いは、世界が続くかぎり語り継がれるだろう。
それからレギンは長いあいだ地面を見つめていたが、やがて重い心で言った。おまえはわたしの兄弟を殺した。わたしも、この行いに罪がないとは言えまい。
シグルズは剣グラムを地面でぬぐって言った。わたしがこの行いをなしとげ、この手の力でこの鋭い剣を試していたとき、おまえは遠くへ行っていた。わたしが竜の力のすべてと戦わねばならなかったあいだ、おまえはヒースの茂みに伏せて、地面と空の区別もつかないありさまだった。
レギンは言った。わたしがこの手で鍛えた鋭い剣が役に立たなかったら、あの竜はいつまでも住みかに横たわっていただろう。あれがなければ、おまえも誰も、今度あれに勝つことはできなかった。
シグルズは答えた。人が戦で敵に向かうときには、鋭い剣より勇ましい心のほうがまさる。
レギンは、ひどく重い口調でまた言った。おまえはわたしの兄弟を殺した。わたしも罪がないとは言えまい。
竜の心臓
シグルズは、リジルという剣で竜の心臓を切り取った。レギンはファーヴニルの血を飲み、言った。頼みがある。おまえにはたやすいことだ。この心臓を火であぶって、わたしに食べさせてくれ。
シグルズは心臓を串に刺して火にかけた。血が泡立ってきたので、焼けたかどうかを指で触って確かめ、その指を口に入れた。
竜の心臓の血が舌に触れたとたん、シグルズにはすべての鳥の声が分かるようになった。そばの茂みで小鳥たちがさえずっているのが聞こえた。
鳥たちの言葉
一羽目が言った。そこにシグルズが座っている。ファーヴニルの心臓を人のために焼いている。自分で食べれば、誰よりも賢い人になれるのに。
二羽目が言った。あそこにレギンが横になっている。自分を信じる者を欺こうと考えている。
三羽目が言った。それなら、レギンの首をはねて、あの黄金のただ一人の主になればいい。
四羽目が言った。あの人がよい助言に従うなら、もっと賢いだろうに。そのあとファーヴニルの住みかへ馬で行き、そこにある大きな宝を手に入れ、それからブリュンヒルドの眠るヒンドフェルを越えていけばいい。そこで大きな知恵が得られる。自分のためを考えて、わたしたちの助言に従えば賢いのに。狼の耳のあるところ、狼の歯もすぐそばにあるのだから。
五羽目が叫んだ。そうだ、そうだ。すでに兄弟を殺した相手を見逃すようなら、思ったほど賢くはない。
最後に六羽目が言った。あいつを殺して、宝の主になるのが手っ取り早い、よい助言だ。
レギンの最期
シグルズは言った。レギンがわたしの破滅となる時は、まだ生まれていない。それより、この兄弟二人に同じ道を行かせよう。
そう言うとシグルズはグラムを抜き、レギンの首を切り落とした。
炎の館に眠る乙女
すると、小鳥たちが歌うのが聞こえた。
赤く輝く腕輪を結べ、シグルズよ。多くのことを恐れるのはふさわしくない。美しい乙女を一人知っている。誰よりも美しく、金を身にまとい、おまえが手に入れるにふさわしい。
ギューキの館へ向かう道は緑だ。そこでは富める王が娘を育てている。
ヒンドフェルの上に高い館が建っている。まわりには赤い炎が高く燃え上がっている。
山の上で、盾の乙女が眠っている。オーディンがその乙女に眠りの棘を刺したのだ。乙女が戦いで、オーディンの望まない者を選んだために。
黄金を積んだグラニ
シグルズはファーヴニルの心臓を少し食べ、残りは取っておいた。それから馬に跳び乗り、竜ファーヴニルの這った跡をたどって、その住みかまで行った。
住みかの戸は開いていた。戸も、その金具も、家の梁も、すべて鉄でできていて、家は地中深く掘られていた。そこでシグルズは、おびただしい黄金と、フロッティという剣を見つけた。さらに恐怖の兜と金の鎖帷子、そのほか多くの美しくすばらしいものを手に入れた。黄金はあまりに多く、馬二頭、いや三頭でも運び出せそうにないとシグルズは思った。
シグルズは黄金をすべて二つの大きな箱に詰め、馬グラニに載せて手綱を取った。ところがグラニはまったく動こうとせず、打たれても動かなかった。シグルズは馬の心を悟り、その背に跳び乗って、拍車を当てた。するとグラニは、荷など何も積んでいないかのように駆けだした。
出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第19章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。鳥は英訳では wood-peckers(キツツキ)とされています。英訳の注によれば、小鳥たちの歌(「炎の館に眠る乙女」の節)は、英訳者が『古エッダ』の「レギンの言葉」から補って挿入したものです。眠る乙女の物語は「眠る戦乙女とシグルズ」に続きます。
出典・資料
- 『ヴォルスンガ・サガ』 — I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
