NORSE · STORY

シグムンドの最後の戦いと折れた剣

老王シグムンドは、若い求婚者をしりぞけて自分を選んだヒョルディースを妻に迎える。だが恨んだリュングヴィ王の大軍との戦いで、片目の男の槍斧に剣を砕かれ、倒れる。死の床の王は、身ごもった妻に剣のかけらを託した。

ヒョルディースの選択

エュリミという、力があり名高い王がいた。その娘ヒョルディースは、女たちのなかで最も美しく、最も賢かった。シグムンドは、ほかに誰もいなくても、この人こそ自分の妻にふさわしいと聞き、エュリミ王の館を訪ねた。

エュリミ王は、シグムンドが敵として来るのでなければ、大きな宴を開こうと言った。使いが行き来して、この旅が戦のためではなく、和やかなものだと伝え合った。こうして盛大な宴が開かれた。そこにはもう一人、フンディング王の息子リュングヴィ王も来ていた。リュングヴィもまた、エュリミ王の娘に求婚していたのである。

エュリミ王は、二人が同じ用で来たのだと分かり、思いを遂げられなかったほうから戦や騒ぎが起こるだろうと考えた。そこで娘に言った。おまえは賢い女だ。夫はおまえ自身が選ぶがいい。二人の王のどちらかを選べ。わたしはおまえの考えに従おう。

ヒョルディースは言った。難しく、厄介なことです。それでも、最も名高いお方、シグムンド王を選びます。年はだいぶ召していらっしゃるけれど。

こうしてヒョルディースはシグムンドと婚約し、リュングヴィ王は去っていった。婚礼の宴は日ごとに盛大になった。そのあとシグムンドは、舅のエュリミ王とともにフン族の国へ帰り、国を治めた。

大軍との戦い

リュングヴィ王とその兄弟たちは、軍勢を集めてシグムンドに攻めかかろうとした。何ごとにつけ負けてばかりだったが、これがいちばん悔しかったのである。彼らはヴォルスング一族の力と誇りを打ち負かしたいと思った。

一行はフン族の国に来ると、こっそり襲うつもりはない、あなたも逃げ隠れはしないだろう、とシグムンド王に知らせてきた。シグムンドは、戦場で迎え撃とうと答えて軍勢を集めた。ヒョルディースは一人の侍女とともに、たくさんの財宝を持って森へ運ばれ、戦いのあいだそこにとどまった。

ヴァイキングたちは、とても支えきれないほどの数で船から押し寄せてきた。シグムンド王とエュリミ王は旗を掲げ、戦の角笛が鳴った。シグムンド王は、かつて父ヴォルスングが持っていた角笛を吹かせ、家来たちを励ました。けれども味方の数は、敵よりはるかに少なかった。

激しく恐ろしい戦いだった。シグムンドは年老いていたが、誰よりも勇ましく戦い、いつも家来たちの先頭にいた。どんな盾も鎖帷子も、その剣を防げなかった。その日、シグムンドは何度も敵の列を突き抜けた。空にはおびただしい矢と槍が飛び交ったが、予言の術者たちの守りによって、王は一つも傷を負わなかった。王の前に倒れた者の数は数えきれず、王の両腕は肩まで血に染まった。

片目の男

戦いがしばらく続いたとき、一人の男が戦場に入ってきた。青い外套を着て、つばの垂れた帽子をかぶり、片目で、手には槍斧を持っていた。男はシグムンド王に向かってきて、槍斧を振り上げた。シグムンドが激しく打ちかかると、剣は槍斧に当たり、まっぷたつに折れた。

そのときから、殺戮と恐れは王の側へ向かいはじめた。シグムンド王の運は去ったのである。家来たちは王のまわりで次々に倒れた。王は自分の身を少しもかばわず、なおも家来たちを励ました。けれども、「多勢に無勢」ということわざのとおりになった。この戦いでシグムンド王も、舅のエュリミ王も、軍の先頭で倒れ、家来の大半もともに倒れた。

剣のかけら

リュングヴィ王は王の館へ向かい、王の娘を手に入れようとした。けれども、そこには妃も財宝もなかった。リュングヴィ王は国じゅうをめぐって手下に治めさせ、これでヴォルスング一族を皆殺しにした、もう恐れることはないと思った。

戦いのあったその夜、ヒョルディースは死者のあいだを歩き、シグムンド王の倒れているところに来た。そして、傷を治すことはできるかと尋ねた。王は答えた。

望みが小さくなってからも生きる者は多い。だが、わたしの運は去った。わたしは傷を治させはしない。オーディンは、わたしがもう二度と剣を抜くことを望んでいないのだ。わたしの剣、そしてオーディンの剣が折れたのだから。オーディンが望むあいだ、わたしは戦ってきた。

ヒョルディースは言った。あなたが治って、わたしの父の仇を討ってくださるなら、何も悪いことはないと思うのに。

王は言った。それは別の者に定められている。おまえは男の子を身ごもっている。その子をよく、気をつけて育てよ。その子はわたしたち一族のなかで、最も高貴で名高い者になる。そして剣のかけらを大切にとっておけ。そこからよい剣が作られ、グラムと呼ばれるだろう。わたしたちの息子がそれを持ち、多くの偉業をなしとげる。その名は、世界が続くかぎり残るだろう。もう十分だ。わたしは傷に疲れた。先に逝った一族に会いに行こう。

ヒョルディースはそばに座りつづけ、王は夜明けに死んだ。

侍女と取りかえた服

夜が明けると、多くの船が陸へ向かって進んでくるのが見えた。ヒョルディースは侍女に言った。服を取りかえましょう。おまえがわたしの名を名のり、王の娘だと言いなさい。

二人はそのとおりにした。船の者たちは、おびただしい死者と、森へ立ち去る二人の女を見て、何か大きな出来事があったにちがいないと思い、船から陸へ跳び降りた。その軍を率いていたのは、デンマーク王ヒャールプレクの息子アールヴで、軍勢を連れて海岸沿いに航海していたのだった。

アールヴは二人の女を探して連れてこさせ、何者かと尋ねた。侍女が二人を代表して答え、シグムンド王とエュリミ王、多くの偉い人々が倒れたこと、それをしたのは誰かを話した。財宝のありかを知っているかと問われると、侍女は案内した。そこにはこれまで見たこともないほどの宝が積まれていた。一行はそれをすべてアールヴの船に運び、ヒョルディースと侍女もいっしょに連れていった。

夜明けの指輪

アールヴが国に帰ってしばらくすると、母の王妃が尋ねた。二人の女のうち、美しいほうが、なぜ腕輪も少なく、服も粗末なのか。おまえたちが軽く扱っているほうこそ、二人のうちで高貴なのではないか。

アールヴは言った。わたしもそう思っていた。あの女は奴隷にはとても見えない。初めて会ったとき、貴人にふさわしい礼で挨拶をしたのだ。試してみよう。

ある日、酒の席で、王は二人の女と話して尋ねた。夜が更けて空の光が見えないとき、どうやって時を知るのか。

侍女は答えた。若いころ、わたしは夜明けにたくさん飲む習いでした。いまはそうしなくなっても、ちょうどその時刻に目が覚めます。それで分かるのです。

王は笑って言った。王の娘にしては、悪い習いだな。そしてヒョルディースに同じことを尋ねた。ヒョルディースは答えた。父がくれた小さな金の指輪があって、夜明けになると指の上で冷たくなります。それで分かるのです。

王は言った。奴隷が身につけていたにしては、たっぷりの金だな。さあ、もう十分長く身を隠していた。初めからすべて話してくれていれば、わたしたち二人が同じ王の子であるかのように扱っただろう。だがおまえのしたことより、もっとよい扱いをしよう。おまえをわたしの妻にする。子を生んだら、ふさわしい贈り物をしよう。

ヒョルディースは自分のことを、すべてありのままに話した。そして大いに敬われ、最も気高い女として重んじられた。


出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第11〜12章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。片目の男が誰かは本文に明記されていませんが、シグムンドの言葉と、英訳の注(オーディンが、かつて自分が与えた剣の持ち主を変えに来た)がオーディンだと示しています(物語「大木に刺さった剣とシグムンド」)。ヒョルディースが身ごもっていた子の誕生と成長は、物語「シグルズの成長と馬グラニ」で語ります。

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