NORSE · STORY

シギ、レーリル、ヴォルスング――英雄の一族の始まり

オーディンの息子と呼ばれたシギは、狩りで負けた奴隷を殺して国を追われ、やがてフン族の国の王となる。その子レーリルは父の仇を討ち、神々の林檎によって世継ぎを授かる。こうして生まれたヴォルスングから、英雄の一族の物語が始まる。

雪の吹きだまり

昔、シギという男がいた。人々からはオーディンの息子と呼ばれていた。もう一人、スカジという、腕っぷしの強い大物もいた。当時の人々の話では、シギのほうが強く、家柄も上だった。

スカジにはブレジという奴隷がいた。仕事にちなんだ名で呼ばれていたが、その腕前と力は、身分の高い者たちに引けを取らず、何人かよりはまさっていた。

ある日、シギはブレジを連れて鹿狩りに出かけた。二人は一日じゅう鹿を追い、夕方に獲物を集めてみると、ブレジのしとめた鹿のほうが、シギのものよりずっと多かった。シギはそれがひどく気に入らなかった。奴隷ごときに狩りで負けるとは、と言って、ブレジに襲いかかって殺し、その体を雪の吹きだまりに埋めた。

夕方、家に帰ると、シギは言った。ブレジはわたしを離れて、森へ馬で行ってしまった。すぐに見えなくなって、それきり何も知らない。

スカジはシギの話を疑い、これは策略で、シギがブレジを殺したのではないかと考えた。人をやって探させると、ある吹きだまりの中で遺体が見つかった。スカジは、これからはこの吹きだまりをブレジの吹きだまりと呼ぶようにと言った。それ以来、人々はとても大きな吹きだまりを、そう呼ぶようになったという。

追放とフン族の国

シギが奴隷を殺したことは明らかだった。シギは「聖所の狼」――罪のために社会の外へ追われた無法者――とされ、父の国にとどまることができなくなった。

するとオーディンがシギに付き添い、長い長い道のりを、国の外へと送っていった。オーディンは、軍船のあるところまで連れていってようやく足を止めた。

シギは、別れぎわに父から与えられた兵力で海の戦いに出た。戦うたびに運に恵まれて勝ちつづけ、ついには戦によって土地と支配を手に入れた。シギは高貴な妻をめとり、フン族の国を治める大きな力をもつ王となり、最も名高い戦士となった。妻とのあいだにはレーリルという息子が生まれ、父の館で大きく、立派に育った。

父の仇を討つレーリル

やがてシギは年老い、多くの者にねたまれるようになった。ついには、最も信頼していた者たち――妻の兄弟たちまでが背いた。彼らはシギが最も油断していて、まわりに守る者が少ないときを狙い、大軍で襲いかかった。シギは、従う者たちとともに倒れた。

息子のレーリルは、そのときその場にいなかった。レーリルは友と国の有力者たちを集めて大きな軍勢をつくり、父の国と王位を手に入れた。

足もとが固まったと思うと、レーリルは母の兄弟たちのしたことを思い起こした。彼らは自分の父を殺したのである。レーリルは大軍を集めて、母方の親族に攻めかかった。親族の縁を軽んじることにはなるが、先に悪事を働いたのは彼らのほうだと考えたのである。レーリルは父を殺した者たちを一人残らず討ちとるまで、戦いをやめなかった。それは誰の目にも恐ろしい行いに見えた。こうしてレーリルは、父よりもさらに力のある王となった。

神々の林檎

レーリルは、ふさわしい妻をめとり、長く連れ添った。けれども、跡を継ぐ子が生まれなかった。二人はそれを深く嘆き、心から神々に子を授けてくれるよう祈った。

オーディンはその祈りを聞いた。フレイヤも二人の願いを聞き入れた。フレイヤは、箱を持って仕える自分の侍女――巨人フリームニルの娘――を呼び寄せ、その手に一つの林檎を持たせて、王のもとへ届けるよう命じた。

侍女は林檎を受け取ると、鴉の羽衣を身につけて飛び、王が塚の上に座っているところまで来た。そして林檎を王の膝の上に落とした。王は林檎を手に取り、それが何のためのものかを悟った。王は塚から家へ帰り、妃のもとへ行った。妃はその林檎を少し食べた。

六冬の病とヴォルスングの誕生

まもなく妃は、自分が身ごもったことを知った。ところが、いつまでたっても子は生まれなかった。

そのころ王は、国の平和を守るため、王たちのならわしどおり戦に出なければならなかった。その旅のあいだにレーリルは病にかかり、死んだ。オーディンのもとへ行こうとしていたのである。それは当時、多くの人々が望んだことだった。

妃の具合は、それからも変わらなかった。子は生まれないまま、六つの冬が過ぎた。妃は、もう長くは生きられないと悟り、子を自分の体から切り出すよう命じた。そのとおりにすると、生まれたのは男の子で、生まれたときから大きく育っていた。人々の話では、その子は母が死ぬ前に、母に口づけをしたという。

子はヴォルスングと名づけられ、父に代わってフン族の国の王となった。幼いころから大きく強く、あらゆる勇ましい行いに大胆で、やがて最も偉大な戦士となり、戦うたびに運に恵まれた。

ヴォルスングの館

ヴォルスングが一人前の男になると、巨人フリームニルは自分の娘リョーズを彼のもとへ送った。かつてレーリル王に林檎を運んだ、あの娘である。ヴォルスングはリョーズを妻とし、二人は長く幸せに、深く愛し合って暮らした。

二人には十人の息子と一人の娘が生まれた。長男はシグムンド、娘はシグニューといい、この二人は双子だった。二人は、ヴォルスング王の子らのなかで最もすぐれ、最も美しかった。ヴォルスング一族は、昔から語り継がれるように、知恵でも勇気でも、あらゆる高く力強いことで、ほかの人々をはるかにしのぐ、誇り高い一族だったという。

ヴォルスング王は、立派な館を建てさせた。館の中には大きな樫の木が一本立っていて、その枝は屋根の上に広がって美しく花を咲かせ、幹は館の中に立っていた。人々はその幹を、ブランストックと呼んだ。


出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第1〜2章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。「聖所の狼」は、英訳の注によれば、罪のために社会から追放された無法者を指す言い方です。シギがオーディンの息子であることは、サガでは「人々にそう呼ばれた」と書かれています。このサガは中世アイスランドで書かれた伝説の物語で、フン族の国などの地名を史実として読むことはできません。

この物語の関連事典

神話事典神々・英雄・怪物・武器・道具・場所を横断して探す。

出典・資料