NORSE · STORY
ヘルギとシグルーン――戦いと婚姻
ノルンたちに運命を織られて生まれたシグムンドの子ヘルギは、十五歳でフンディング王を討つ。望まぬ婚約から逃れたいヴァルキューリアのシグルーンに頼まれ、ヘルギは大船団で嵐の海を渡り、フレカステインの戦いに勝つ。けれども、その勝利には大きな代償があった。
ノルンが織った運命
『古エッダ』の「フンディング殺しのヘルギの歌 第一」は、こううたいはじめる。
昔、鷲が叫び、天の岩山から聖なる流れが落ちていたころ、勇ましい心をもつヘルギが、ブラールンドに生まれた。シグムンド王とボルグヒルドの息子である(物語「シグニューの復讐とシンフィヨトリ」)。
夜、館にノルンたちがやって来て、この高貴な子の一生を形づくった。あらゆる戦士のなかで最も名高く、王たちのなかで最もすぐれた者になるように、と。ブラールンドの町々が揺れるなか、ノルンたちは力強く運命の布を織り、金の糸を織りこんで、月の館にしっかりと留めた。
木の上で餌を探す鴉が、別の鴉に言った。シグムンドの息子が、生まれてまだ半日なのに、鎖帷子を着て立っている。目は勇士のように鋭く光り、狼たちの友となるだろう。わたしたちはうれしい。
シグムンド王は戦場から帰ってきて、わが子にヘルギと名をつけ、多くの土地と、蛇の飾りのついた剣を与えた。
フンディング殺し
ヘルギは友に囲まれて力強く育ち、仲間たちには惜しみなく黄金を与えた。そして十五歳になったとき、長く国と民を治めてきた強い王フンディングを討ちとった。
フンディングの息子たちは、奪われた財宝と殺された父の償いを求めたが、ヘルギは聞き入れなかった。かわりに待っているのは、灰色の槍の大嵐とオーディンの恐ろしさだ、と言った。こうして戦いが起こり、ヘルギはロガフィョッルでフンディングの息子たちを皆討ちとった。それから鷲の石の下に腰を下ろした。それ以来、ヘルギは「フンディング殺し」と呼ばれるようになった。
空から来た乙女
そのとき、ロガフィョッルから光が輝き、その光から稲妻が飛んだ。天の野に、兜をかぶった乙女たちが現れた。鎖帷子は血に赤く染まり、槍からは火花が散っていた。
ヘルギが南から来た乙女に、今夜わたしといっしょに家へ来ないかと尋ねると、ホグニの娘は馬から跳び降りて言った。
わたしたちには、腕輪を与える王とビールを飲むより、ほかにすべきことがあります。父はわたしを、グランマルの残忍な息子ホズブロッドの花嫁にすると約束してしまいました。けれどもヘルギ、わたしは以前、ホズブロッドなど猫の息子くらいの王だと言ったのです。数夜のうちに、あの男がやって来ます。あの男を戦場に呼び出すか、わたしを奪い去ってください。
ヘルギは言った。恐れることはない。あなたが望まないままあの男のもとへ行く前に、まずわたしたちの勇気が試されるのだ。わたしが死なないかぎり、武器が打ち合うだろう。
その乙女は、ホグニ王の娘でヴァルキューリアのシグルーンだった。
嵐の海
ヘルギは陸にも海にも使者を送って軍勢を集めた。何百という兵が集まり、金で飾られた美しい船が並んだ。数えきれないほどの長い船が、戦士を満載していた。
船団はヴァリンスフィヨルズから海へ出た。櫂を打つ音と鉄の打ち合う音が響き、盾と盾がぶつかった。そこへ恐ろしい嵐が襲いかかった。波――海の神エーギルの娘たち――が船を沈めようとしたが、ヘルギは帆をさらに高く上げさせ、船乗りたちも波を恐れなかった。
すると天から、勇ましいシグルーンが、男たちとその航海を助けた。王の船は、海の女神ラーンの爪から力強く抜け出し、グニパルンドの沖に着いた。
ののしり合い
岸の丘からそれを見ていたグランマルの息子ゴズムンドが、船団を率いる王は誰かと尋ねた。
シグムンドの息子シンフィヨトリが、金の縁の赤い盾を櫂の上に掲げて答えた。言葉で王たちと渡り合うのが得意な男である。シンフィヨトリは言った。今夜、豚に餌をやり、犬に残飯を探させるときに伝えるがいい。東からユルヴィングの一族が、戦いを求めてグニパルンドに来たと。ホズブロッドは、船団の真ん中で、逃げることを知らないヘルギを見つけるだろう。
こうしてシンフィヨトリとゴズムンドは、互いの昔の恥を言い立てて、激しくののしり合った。
ヘルギは言った。シンフィヨトリよ、空しい言葉を並べるより、戦いを挑んで鷲を喜ばせるほうがおまえにはふさわしい。グランマルの息子たちは好ましい者たちではないが、勇士は本当のことを言うべきだ。彼らはモインスヘイマルで、剣をふるう心をもっていることを示したのだから。
フレカステインの勝利
ホズブロッドは兜をかぶって進み出て、仲間の王たちを呼び集めた。ホグニも、フリングの息子たちもやって来た。
フレカステインで、きらめく刃が嵐のように打ち合った。フンディング殺しのヘルギは、いつも戦士たちのいちばん前にいた。戦いに激しく、逃げるのは遅く、その心はかたかった。
天から兜をかぶった乙女たちが降りてきて、王を見守った。美しいシグルーンが言った。
勇士よ、幸いあれ。人々のあいだで幸せに、いつまでも生きるがいい。あなたは多くの者に死の恐れをもたらしてきた、恐れを知らない敵を倒した。あなたは赤く輝く腕輪と、気高い花嫁を手に入れた。ホグニの娘とフリングスタジルの地、富と勝利を、どちらもあなたのものに。戦いは終わりつつある。
第二の歌が語る代償
同じ出来事を、「フンディング殺しのヘルギの歌 第二」は別の形で伝えている。
この詩の散文では、シグルーンはヘルギの船に問いかけに来て、名を隠すヘルギを見抜き、のちにホズブロッドとの婚約を嫌って、ヴァルキューリアたちとともに空と海を越えてヘルギのもとへ駆けつける。シグルーンは、会う前からシグムンドの息子を心から愛していた、けれども親族の怒りが怖い、と打ち明ける。ヘルギは、ホグニの怒りも親族の怒りも恐れるな、あなたはわたしとともに生きるのだ、と答える。
フレカステインの戦いで、グランマルの息子たちとその味方は皆殺された。生き残ったのは、ホグニの息子ダグだけで、ダグはヴォルスング一族に忠誠を誓った。
シグルーンは死者のあいだを歩き、死にかけたホズブロッドを見つけて言った。ホズブロッド王よ、シグルーンがあなたの腕に抱かれることは、決してありません。
それからヘルギのもとへ行き、喜んだ。けれどもヘルギは言った。乙女よ、あなたの運は美しいことばかりではない。わたしはノルンを責める。この朝、フレカステインで、ブラギとホグニがわたしの手にかかって倒れた。
ブラギとホグニ――シグルーンの兄弟と父である。シグルーンは泣いた。
ヘルギは言った。悲しむな、シグルーン。戦いには勝った。戦士は自分の運命から逃れられないのだ。
シグルーンは言った。あなたの胸の上で安らげるのなら、倒れた人たちを生き返らせたい。
出典について:本稿は『古エッダ』の「フンディング殺しのヘルギの歌 第一」と「第二」の前半に基づく再話です(英訳は H・A・ベロウズ訳、1923年)。二つの詩は同じ出来事を別の形で伝えていて、「第一」ではシグルーンは勝利を祝福し、「第二」では戦いで彼女の父と兄弟が倒れます。「第二」の散文は、シグルーンを「ヘルギとスヴァーヴァ」のスヴァーヴァの生まれ変わりとしています(物語「ヘルギとスヴァーヴァ」)。『ヴォルスンガ・サガ』第9章も、この戦いと、シンフィヨトリと相手方のののしり合いを散文で語っています。シンフィヨトリたちの侮辱の言葉は要約しました。その後のヘルギとシグルーンの物語は「ヘルギとシグルーン――死者との再会」に続きます。
出典・資料
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩 — 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 『ヴォルスンガ・サガ』 — I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
