NORSE · STORY

シグルズを悼むグズルーン

夫シグルズの亡骸のそばで、グズルーンは泣くことさえできなかった。女たちが自分の悲しみを語っても、涙は出ない。ゴッルロンドが覆いを取って夫の顔を見せたとき、ようやく涙があふれる。『古エッダ』の二つの「グズルーンの歌」が伝える嘆き。

泣けないグズルーン

『古エッダ』の「グズルーンの歌 第一」は、シグルズが殺されたあとの場面をうたう(物語「王妃たちの争いとシグルズの死」)。

グズルーンは、死んだシグルズのそばに座っていた。死んでしまいたいと思った。けれども、ほかの女たちのように涙を流すことも、手をもむことも、声をあげて嘆くこともなかった。心は張り裂けそうなのに、泣くことができなかったのである。

賢い戦士たちがやって来て、重い悲しみを和らげようとしたが、グズルーンは泣けなかった。

女たちの悲しみ

次に、金で身を飾った戦士たちの妻がやって来た。女たちはそれぞれ、自分がこれまでに負った最もつらい悲しみを語った。

ギューキの姉妹ギャフラウグは言った。地上でわたしほど喜びのない者はいない。わたしは五人の夫を失い、二人の娘と三人の姉妹、八人の兄弟を失った。それでも、生きてきたのだ。

フン族の王妃ヘルボルグは言った。わたしにはもっと大きな悲しみがある。南の国で七人の息子と夫が戦に倒れた。父と母と四人の兄弟は、風が船を襲い、海が船腹を砕いたときに波の中で死んだ。わたしは自分の手で遺体を整えて葬ったが、慰めに来る者は誰もいなかった。同じ半年のうちに、わたしは戦で捕らえられ、毎朝、王の妻の靴を整えて結ばされた。王妃は嫉妬に狂って、たびたびわたしを打った。

それでもグズルーンは泣けなかった。夫の亡骸のそばで、それほど深い悲しみに心を閉ざしていたのである。

覆いを取ったゴッルロンド

ギューキの娘ゴッルロンドが言った。養母よ、あなたの知恵では、この若い妻を慰める道は見つからない。

ゴッルロンドは勇士の亡骸の覆いを取らせ、その頭を妻の膝の上に載せて言った。愛した人を見て。まだ生きているかのように、その唇に口づけしなさい。

グズルーンは、一度だけ目を向けた。血で固まった髪。かつては輝いていたのに、いまは光を失った目。刃に貫かれた勇士の胸。

グズルーンは枕の上に身をかがめた。髪はほどけ、頬は熱くなり、涙が雨のしずくのように流れ落ちた。ギューキの娘グズルーンは泣いた。涙は髪をつたって流れた。中庭からは、勇士の妻が飼っていた美しい鵞鳥たちの鳴き声が聞こえた。

槍葱のように

ゴッルロンドは言った。地上のどんな人々のあいだにも、あなたがたほど大きな愛はなかった。シグルズがいないとき、あなたは家でも外でも、少しも幸せではなかった。

グズルーンは言った。わたしのシグルズは、ギューキの息子たちの上にそびえていた。草の上に高く伸びる槍葱のように、王たちが帯につける、輝く宝石のように。

あの人にとって、わたしはオーディンのどの乙女よりも気高く見えていた。それがいまは、柳の枝にかかった木の葉のように小さい。わたしの勇士は死んでしまった。

あの人の席にも寝床にも、心から信じた友の姿はもう見えない。罪はギューキの息子たちにある。妹をこれほど泣かせているのは、彼らなのだ。あなたがたが昔の誓いを守ったのと同じように、あなたがたの国は民を失うだろう。グンナルよ、黄金はおまえに何の喜びも与えまい。かつてシグルズと誓いを交わしたおまえには。

シグルズがグラニに鞍を置き、ブリュンヒルドを得るために出かけていった日、館はもっと喜びに満ちていた。あの悪しき女を得るために、悪い時に。

ブリュンヒルドの言葉

ブズリの娘ブリュンヒルドが言った。グズルーンにようやく涙を流させ、今日、魔法で口を開かせた魔女など、夫も子も失ってしまえばいい。

ゴッルロンドは言った。そんな言葉を口にするな、憎むべき女よ。あなたはいつも気高い人々の破滅だった。七人の王に悲しみをもたらし、多くの女から愛する人を奪ってきた。

ブリュンヒルドは言った。すべての悲しみの罪は、わたしの兄弟アトリにある。フン族の館で、勇士のまわりに黄金の炎がきらめくのを見たときに。その旅の代償を、わたしはずっと払いつづけている。

ブリュンヒルドは柱のそばに立って力を振りしぼった。シグルズの傷を見たとき、その目からは火が燃え、毒の息を吐いた。

そのあと、グズルーンは荒野の森へ去り、はるばるデンマークまで旅して、ハーコンの娘ソーラのもとで七つの半年を過ごした。

第二の歌の回想

『古エッダ』の「グズルーンの歌 第二」(古いグズルーンの歌)では、グズルーン自身がこれまでのことを振り返って語る。写本の散文によれば、それはのちにアトリの館で、多くの家来を失ったシュズレク王とともに嘆きを語り合ったときのことだという。

グズルーンは語る。母はわたしを乙女のなかの乙女として生み、わたしは兄弟を愛していた。ギューキはわたしに金を持たせて、シグルズに嫁がせた。シグルズは、ギューキの息子たちの上に、草の上の青い葱のように、獣たちの上の牡鹿のように、灰色の銀の上の赤い金のようにそびえていた。けれども兄弟たちは、ついにあの人を殺してしまった。

集いの場から、グラニが蹄を鳴らして駆け戻ってきたが、シグルズはもう帰ってこなかった。汗にまみれた馬に、わたしは泣きながら話しかけた。グラニは草に頭を垂れた。主人が殺されたことを知っていたのだ。ホグニが知らせた。シグルズは南の道で、わたしたちの手で切り倒された、と。

そのあとグズルーンは、デンマークのソーラのもとで過ごした日々、母グリームヒルドに飲まされた、悲しみを忘れさせる冷たく苦い飲み物、兄弟たちの償いの申し出、そして意に反してアトリに嫁いだことを語っていく。


出典について:本稿は『古エッダ』の「グズルーンの歌 第一」と「グズルーンの歌 第二」の前半に基づく再話です(英訳は H・A・ベロウズ訳、1923年)。第一の歌は、亡骸のそばの場面を語り手の外からうたい、第二の歌はグズルーンが自分の過去を一人称で回想します。第二の歌の聞き手シュズレクについて、英訳者は、東ゴート王テオドリック(ドイツ伝承のディートリヒ)にあたり、アトリ(アッティラ)と同じ時代に置くのは伝承上の時代錯誤で、写本の注記者がこの場面を設定したのは誤りだろうと述べています。シグルズの死の事情は、第二の歌(南の道で切り倒される)と『ヴォルスンガ・サガ』(寝床で刺される)とで異なります。

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