NORSE · STORY

原初の巨人ユミルと牝牛アウズフムラ

霜のしずくから生まれた巨人ユミルを、同じ霜から生まれた牝牛アウズフムラが乳で養う。牝牛がなめた氷の塊からは、やがてオーディンの祖父となる者が現れる。

霜から生まれた巨人

まだ大地も空もなかったころ、北の冷たい世界と南の熱い世界のあいだには、ギンヌンガガプという深い空間が広がっていた。そこで熱い息吹が霜に触れ、解けてしたたったしずくから、最初の命が生まれた。巨人ユミルである。ここまでのいきさつは、物語「ギンヌンガガプ――世界が生まれる前」で語った。

『散文のエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」では、ガングレリという者が問いを重ね、ハールをはじめとする語り手たちがそれに答えるかたちで、世界の始まりが語られる。

語り手たちは、ユミルを神とはみなさない。ユミルは悪しき者で、その一族もみな同じだったという。

ユミルが眠ると、汗をかいた。すると左の腋の下から、男と女が生まれた。さらに、片方の足がもう片方の足とのあいだに息子をもうけた。こうして生まれた者たちが、霜の巨人の一族である。

四筋の乳

では、ユミルは何によって養われていたのか。ガングレリがそう尋ねると、ハールは答えた。

霜がしたたり落ちると、すぐにそこから一頭の牝牛が生まれた。名をアウズフムラという。

アウズフムラの乳房からは、四筋の乳が流れ出ていた。ユミルはその乳で養われた。

牝牛がなめた氷

ガングレリはさらに尋ねた。それなら、その牝牛は何を食べていたのか。

アウズフムラは、塩気をふくんだ氷の塊をなめていた。

なめはじめた最初の日の夕方、氷の塊から人の髪が出てきた。二日目には、人の頭が現れた。そして三日目には、人の全身がそこにあった。

この者の名はブーリという。姿が美しく、大きく、力強かった。

オーディンの誕生

ブーリには、ボルという息子が生まれた。ボルは、巨人ボルソルンの娘ベストラを妻にむかえた。

ボルとベストラのあいだには、三人の息子が生まれた。一人目はオーディン、二人目はヴィリ、三人目はヴェーである。

ハールは、このオーディンが兄弟とともに天と地を治める者だと信じている、と語っている。

ここから始まる物語

ユミルの体からは、霜の巨人の一族が生まれた。牝牛アウズフムラがなめた氷からはブーリが現れ、その孫としてオーディンたち三兄弟が生まれた。

このあと、ボルの息子たちはユミルを倒し、その体から大地や海、天を作ることになる。物語は、オーディン兄弟による世界の創造へと続いていく。


出典について:本稿は『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」第6章に基づき、冒頭で第5章の内容を要約した再話です。参照した英訳(A・G・ブロデュール訳、1916年)では、牝牛の名は Audumla と綴られています。

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