ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
スレイプニル
Sleipnir
オーディンの馬。灰色で八本の脚をもち、神々と人間のうちで最もすぐれた馬とされる。ロキが牡馬スヴァジルファリとのあいだに産んだ。
最もすぐれた馬
スレイプニルは、オーディンの馬である。『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」は、アース神族の馬の名を並べるなかで、スレイプニルが最もすぐれ、オーディンが持ち、八本の脚をもつと語る。
同じ書物に引かれる詩でも、木ではユグドラシル、アース神族ではオーディン、馬ではスレイプニルが最上とされている。
生まれのいきさつ
スレイプニルの生まれは、神々の城壁をめぐる取り決めの話として語られる。城壁を一冬で築くと請け負った職人は、牡馬スヴァジルファリに石を運ばせ、工事は期限の前に仕上がりそうになった。報酬を渡したくない神々に脅されたロキが手を打ち、ある晩、森から現れた牝馬を追って牡馬は仕事を離れた。
ロキはスヴァジルファリと交わり、しばらくして灰色で八本脚の仔馬を産んだ。この馬が、神々と人間のうちで最もすぐれた馬だという。父はスヴァジルファリ、産んだのはロキ、乗り手はオーディンである。
ほかの場面
同じ書物のバルドルの死の話では、ヘルの国へ向かう使者ヘルモーズのために、オーディンの馬スレイプニルが引き出され、ヘルモーズがそれに乗って出発する。
登場する物語
- 神々の城壁を築いた者――太陽と月を求めた職人一冬で城壁を築く代わりに、女神フレイヤと太陽と月を求めた職人。工事が期限の前に仕上がりそうになると、神々はロキを脅して取り決めを壊させる。オーディンの馬スレイプニルの生まれを語る話。
- 眠る戦乙女とシグルズヒンドフェルの山上に燃える火の中、盾をめぐらせた砦で、武装したまま眠る者がいた。シグルズが鎖帷子を裂くと、目覚めたのはオーディンに眠らされた戦乙女ブリュンヒルドだった。乙女はルーンの知恵と生きるための忠告を授け、二人は誓いを交わす。
- バルドルが見た不吉な夢――死者の国の巫女神々の愛するバルドルが不吉な夢を見た。オーディンはスレイプニルに乗って死者の国へ下り、墓に眠る巫女を呪文で呼び起こす。名を偽って問いを重ねるうち、バルドルの運命と、巫女の正体が明らかになっていく。
- バルドルの死――ヤドリギの矢不吉な夢を見たバルドルのため、フリッグはあらゆるものに彼を傷つけないと誓わせる。神々はその不死身を遊びにしたが、ただ一つ誓いを求められなかったヤドリギを、ロキが盲目のヘズに射させた。神々と人間に起きた最大の不幸と、その火葬までを語る。
- フレイヤとヒュンドラ――オッタルの系譜女神フレイヤは洞窟の女巨人ヒュンドラを起こし、お気に入りの若者オッタルの先祖を語らせる。金の猪に乗る女神と、皮肉を返す女巨人。長い系譜と小さな世界の予言のあと、二人は激しい言葉を交わして別れる。
- グリームニルの試練と王の結末オーディンとフリッグの賭けから、名を明かさない旅人グリームニルは王ゲイルロズに捕らえられ、二つの火のあいだで八夜を過ごす。一杯の角杯をくれた王子にだけ報い、神々と世界の秘密を語り終えたとき、客は自分の本当の名を告げる。
- ヘイズレク王と謎かけどんな謎も解くと名高いヘイズレク王の前に、王と不和の男ゲストゥムブリンディが謎の勝負に現れる。だがその男は、オーディンに助けを求めた本人と入れかわった、見知らぬ客だった。酒、橋、太陽、波……謎が重ねられ、最後の問いで客の正体が明らかになる。
- ヘルの国へ向かったヘルモーズバルドルを取り戻すため、ヘルモーズはスレイプニルに乗り、九夜をかけて死者の国へ向かう。ヘルが示した条件は、世界のすべてのものがバルドルのために泣くこと。ほとんどすべてが泣いたが、洞窟の女巨人だけが涙を拒んだ。
- シグルズの成長と馬グラニ亡き父シグムンドの子シグルズは、デンマークのヒャールプレク王の館で育ち、鍛冶の名手レギンに学ぶ。森で出会った長いひげの老人の助けで、スレイプニルの血を引く馬グラニを選んだシグルズに、レギンは竜ファーヴニルの黄金の話をもちかける。
- トールとフルングニルの決闘――頭に残った砥石馬比べからアースガルズへ入りこみ、酔って大言を吐いた巨人フルングニル。トールは初めての一騎打ちに臨み、槌で巨人を倒すが、砕けた砥石のかけらは今もトールの頭に刺さったままだという。
- 世界樹ユグドラシル――三本の根と三つの泉枝は全世界に広がり、天の上にまで届く大きなとねりこ、ユグドラシル。三本の根の下にある泉、木に住む生き物たち、運命を定めるノルン、そして天にある神々とエルフの住まいをたどる。
関連する事典項目
出典
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
- 原題
- Gylfaginning
- 該当箇所
- 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。
