NORSE · STORY
ヘイズレク王と謎かけ
どんな謎も解くと名高いヘイズレク王の前に、王と不和の男ゲストゥムブリンディが謎の勝負に現れる。だがその男は、オーディンに助けを求めた本人と入れかわった、見知らぬ客だった。酒、橋、太陽、波……謎が重ねられ、最後の問いで客の正体が明らかになる。
謎で裁かれる国
魔剣テュルヴィングを受け継いだヘルヴォルの息子ヘイズレクは、荒々しい若者だったが、のちにゴート人の国レイズゴタランドの王となった(物語「ヘルヴォルと魔剣テュルヴィング」)。多くの戦いと争いを経て、ヘイズレク王はやがて自分の国に落ち着き、大いなる賢者となった。
王はこう定めていた。自分に不正をはたらいた者でも、王の裁判官による裁きを受ける機会は奪わない。けれども、王に解けない謎を出すことができたなら、その者は罪を問われずに放免される、と。ところが人々が王に謎をかけても、王に解けない謎は一つもなかった。
入れかわった男
レイズゴタランドに、ゲストゥムブリンディという有力な男がいた。王とは仲がよくなかった。王はゲストゥムブリンディに、定めた日に来るように、さもなければ迎えの者を送ると伝えた。
ゲストゥムブリンディはどちらも気に入らなかった。言葉の勝負では王にかなわないと分かっていたし、自分の罪は多かったので、裁判官の裁きにもあまり望みはなかった。けれども、王が迎えの者を送れば、命はないことも知っていた。
そこでゲストゥムブリンディは、オーディンに犠牲を捧げ、大きな供え物を約束して、助けを求めた。
ある晩、一人の見知らぬ者がゲストゥムブリンディを訪ねてきて、自分もゲストゥムブリンディという名だと言った。二人はあまりによく似ていて、見分けがつかなかった。二人は服を取りかえ、家の主は身を隠した。誰もが、その見知らぬ者を家の主だと思った。
謎の勝負
その男は王のもとへ行き、挨拶した。王は男を見て、黙っていた。ゲストゥムブリンディは言った。王よ、和解をしに参りました。
裁判官の裁きを受けるか、と王は尋ねた。ほかに逃れる道はないのですか、と男は言った。
王は言った。わたしに解けない謎を出せれば、放免しよう。
とてもできそうにありません、と男は言った。けれども、もう一方の道はつらすぎます。では謎のほうにしましょう。
王は言った。それでよい。勝負の結果には大きなことがかかっている。わたしを負かせば、おまえはわたしの娘と結婚してよい。誰にも文句は言わせない。だが、おまえがそれほど賢いとは思えない。わたしがかけられた謎を解けなかったことは、まだ一度もないのだから。
ゲストゥムブリンディのために椅子が置かれ、人々は知恵の言葉を聞こうと耳を傾けた。
酒、橋、太陽
ゲストゥムブリンディは始めた。
昨日もっていたものが、いまほしい。王よ、それが何か当ててみよ。人を疲れさせ、言葉を遅らせ、それでいて言葉を生み出すもの。ヘイズレク王よ、この謎を解きたまえ。
王は答えた。よい謎だ、ゲストゥムブリンディ。解いたぞ。――この者に酒をやれ。それは多くの人の分別を乱すものだ。それで口数が多くなる者もいれば、言葉がもつれる者もいる。
ゲストゥムブリンディは言った。わたしは家を出て、道を進み、道のなかの道を見た。下にも道、上にも道、四方にも道があった。
王は答えた。おまえは橋を渡ったのだ。下には川の流れ、頭の上と両脇には鳥が飛んでいた。それが鳥たちの道だ。川には鮭がいて、それが鮭の道だった。
ゲストゥムブリンディは言った。デリングの戸口の外で、わたしが見た不思議なものは何か。あらゆる国で人々を照らし、それでいて狼たちがいつも奪おうと争っているもの。
王は答えた。太陽だ。あらゆる国を照らし、すべての人の上に輝く。狼の名はスコッルとハティ。太陽の前と後ろをついて行く狼たちだ。
王はさらに言った。おまえは学のある人のようだが、いつも同じ始め方ばかりせずに謎を出せないのか。
盤上の娘、白い頭巾の女たち
ゲストゥムブリンディは、次々に謎を出した。
武器をもたずに主のまわりで戦う娘たちは誰か。暗い赤の娘たちはいつも主を守り、白い娘たちは主を滅ぼそうとする。――それは盤上の遊びだ、と王は答えた。駒は王のまわりで、武器なしで打ち合い、赤い駒が王を助ける。
父の楽しみのために、嘆きながら行く娘たちは誰か。白い頭巾をかぶり、髪は輝き、嵐のときにはひどく目を覚ましている。――それは波だ。エーギルの乙女たちと呼ばれる、と王は答えた。
岩を寝床にする、塵のような乙女たち。日の光のなかでは黒くくすんでいるが、暗くなるほど美しく見える。――炉の中の白い燃えさしだ。
どの謎にも、王はこう答えた。よい謎だ、ゲストゥムブリンディ。解いたぞ。
十の足と三つの目
ゲストゥムブリンディは言った。十の足と、三つの目と、一つの尾をもつ二者は誰か。
王は答えた。昔のことにまで戻って持ち出してくるとは、ずいぶん困っているようだな。それはスレイプニルに乗るオーディンだ。スレイプニルの脚が八本、オーディンの脚が二本。目はスレイプニルが二つ、オーディンが一つで三つになる。
最後の問い
ゲストゥムブリンディは言った。最後に教えてくれ、ヘイズレクよ、もしあなたがどの王よりも賢いのなら。オーディンは、火葬の薪の上に載せられる前のバルドルの耳に、何をささやいたのか。
王は言った。きっと恥知らずで、臆病で、まったく卑しいことにちがいない。おまえが言ったその言葉を知っているのは、おまえだけだ。悪しき、みじめな者よ。
そう言うと王はテュルヴィングを抜き、ゲストゥムブリンディに打ちかかった。けれども男は鷹に姿を変え、広間の窓から飛び去った。剣は鷹の尾に当たった。異教の言い伝えによれば、鷹の尾が短いのは、それ以来のことだという。
オーディンは、自分に打ちかかった王に怒っていた。その夜、ヘイズレク王は殺された。
王の最期
ヘイズレク王は、西の国への遠征で捕らえた九人の奴隷を持っていた。いずれも高貴な家の出で、捕らわれの身を恨んでいた。ある夜、王がわずかな家来とともに寝ていると、奴隷たちは武装して王の寝ている建物へ行った。見張りを殺し、王の寝所に押し入って、王とそこにいた者を皆殺しにした。そしてテュルヴィングと、見つけた宝をすべて奪って逃げた。
その後のテュルヴィングとヘイズレクの息子たちの物語は、「ゴート族とフン族の戦い」へ続く。
出典について:本稿は『ヘルヴォルとヘイズレクのサガ』第IX章の終わりから第XII章の初めに基づく再話です(英訳は N・カーショー訳『Stories and Ballads of the Far Past』、1921年)。謎は数が多いため、本稿ではその一部だけを紹介しました。最後の問い――オーディンがバルドルの耳に何をささやいたか――は、『古エッダ』の「ヴァフスルーズニルの言葉」の最後の問いと同じで、そちらでも問われた巨人はこの問いで相手がオーディンだと悟ります(物語「オーディンとヴァフスルーズニルの知恵比べ」)。サガは、客がオーディンだとはっきり名指しせず、オーディンが王に怒ったと語ります。
出典・資料
- 伝説サガ集『Stories and Ballads of the Far Past』 — Nornagest / Sörli / Hromund Greipsson / Hervör and Heithrek。個別箇所は制作時確定
