NORSE · STORY
大木に刺さった剣とシグムンド
シグニューとゴートランド王シゲイルの婚礼の宴に、片目の老人が現れ、館の大木に剣を突き刺す。誰も抜けなかった剣を、シグムンドだけがたやすく抜いた。剣を買い損ねたシゲイルは何食わぬ顔で一族を自国へ招くが、シグニューは災いを予感していた。
シゲイル王の求婚
ゴートランドに、シゲイルという王がいた。多くの民を治める力ある王だった。シゲイルはヴォルスング王を訪ね、娘のシグニューを妻にほしいと申し入れた(ヴォルスング王と一族については、物語「シギ、レーリル、ヴォルスング――英雄の一族の始まり」)。
王もその息子たちも、この申し出を快く受けた。けれどもシグニュー自身は気が進まなかった。それでも、ほかのすべてのことと同じように、このことも父の考えに任せると言った。こうして王は娘をシゲイルに与えることに決め、シグニューはシゲイル王と婚約した。婚礼の宴は、ヴォルスング王の館で開かれることになった。
片目の老人
ヴォルスング王は力のかぎり宴の支度を整えた。約束の日になると、招かれた客たちとともに、シゲイル王が大勢の有力な家来を連れてやって来た。
館には端から端まで大きな火がたかれ、その真ん中に、あの樫の大木ブランストックが立っていた。
人々が夕方、火のそばに座っていたときのことである。誰も見たことのない一人の男が、館に入ってきた。まだらの外套をはおり、裸足で、骨まで締めつけるようにぴったりした亜麻のズボンをはき、手には剣を持ち、つばの垂れた帽子をかぶっていた。とても大きく、年老いて見え、片目だった。
男はブランストックのところまで歩いていくと、剣を振り上げ、幹に柄まで深く突き刺した。誰も男に挨拶しようとはしなかった。男は口を開いた。
この剣を幹から引き抜いた者は、わたしからの贈り物としてそれを手に入れる。そして、これ以上の剣を手にしたことは一度もないと、まことに知るだろう。
そう言うと、老人は館から出ていった。それが誰なのか、どこへ行ったのか、知る者はいなかった。
抜けた剣
人々は立ち上がった。いちばん先に剣に触れた者がいちばん得をするだろうと考えたので、誰も最後になりたくはなかった。まずいちばん高貴な者たちが行き、それから次々にほかの者たちが試した。けれども誰一人として、剣を抜くことはできなかった。どれほど引っぱっても、剣はびくともしなかった。
そこへ、ヴォルスング王の息子シグムンドが進み出て、剣に手をかけた。すると剣は、ゆるく置いてあったものを持ち上げるように、するりと抜けた。
その剣のすばらしさに、こんな剣は見たことがないと誰もが思った。シゲイル王は、剣の重さの三倍の金で、シグムンドからそれを買いたいと言った。シグムンドは答えた。
あなたの定めがこの剣を持つことであったなら、あなたもわたしと同じように、あの幹から抜けたはずだ。だが、まずわたしの手に来た以上、たとえあなたが持っている金をすべて差し出しても、決して渡しはしない。
シゲイル王はこの言葉に腹を立て、ばかにされたと思った。けれども、用心深く、二心のある男だったので、少しも気にしていないふりをした。その晩のうちに、どうやって仕返しをするかを考えていた。それは、のちにはっきりすることになる。
一夜だけの婚礼
その夜、シゲイル王はシグニューと床をともにした。翌朝はよく晴れていた。するとシゲイル王は、もう帰ると言いだした。風が強まって、海が渡れなくなってはいけないから、というのである。ヴォルスング王も息子たちも引き止めなかった。シゲイルが宴から早く去りたがっているのが分かったからである。
シグニューは父に言った。
わたしはシゲイルといっしょに行きたくはありません。あの人に心がほほえまないのです。わたしには先を見る力があり、一族の守り霊からも分かるのです。この婚礼をすぐに取り消さなければ、わたしたちに大きな災いが降りかかるでしょう。
父は答えた。
娘よ、そんなことを言ってはいけない。何の落ち度もない相手との誓いを破るのは、あの人にとっても、わたしたちにとっても大きな恥だ。この話を取り消せば、もうあの人を信じることもできないし、友として付き合ってもらえることもない。あの人はできるかぎりの悪いやり方で仕返しをしてくるだろう。誓いを立てたからには、それを守ることだけがふさわしいのだ。
ゴートランドへの招き
シゲイル王は帰り支度をした。宴を去る前に、シゲイルは義父のヴォルスング王に、三か月たったら息子たちを皆連れて、ゴートランドへ自分を訪ねてきてほしいと言った。王の名誉にふさわしいと思うだけの供を連れてくるように。そうすれば、一夜しかとどまらなかった――人々のならわしに外れる――婚礼の宴の埋め合わせをしよう、と。
ヴォルスング王は、約束の日に行くと誓った。こうして婿と舅は別れ、シゲイルは妻を連れて国へ帰っていった。
出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第3〜4章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。片目の老人が誰かは、サガの本文には書かれていません。英訳の注は、この男はオーディンで、ミーミルの泉の水と引きかえに片目を差し出したため、いつもこの姿で描かれると説明しています(物語「オーディンが片目を失った伝承」)。剣の名は、この章ではまだ明かされません。
出典・資料
- 『ヴォルスンガ・サガ』 — I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
