NORSE · STORY
ノルナゲストと命の蝋燭
キリスト教の王オーラヴ・トリュッグヴァソンの宮廷に、ゲストと名のる不思議な客が現れる。シグルズに仕え、古い英雄たちの宮廷を渡り歩いたという男は、生まれたときノルンに定められた運命――蝋燭が燃えつきるまでの命――を語り、最後に自分の蝋燭に火をつけさせる。
王の館の客
オーラヴ・トリュッグヴァソン王がトロンヘイムにいたときのことである。ある日の夕方、一人の男がやって来て、うやうやしく王に挨拶した。王が誰かと尋ねると、男はゲストだと名のった。ゲストとは「客」という意味である。
王は言った。何と呼ばれていようと、おまえはここでは客だ。
男は言った。王よ、わたしは本当の名を申し上げました。おもてなしをいただけるなら、喜んでお受けします。
日が暮れかけていたので、王はその日は客と話をしなかった。
その夜、王は寝床で目を覚ましたまま祈りを唱えていた。ほかの者はみな眠っていた。すると、扉はすべて鍵がかかっていたのに、エルフか何かの霊のようなものが広間に入ってくるのが見えた。それは眠る男たちの寝床のそばを一つずつ通りすぎ、いちばん奥の寝床の前で立ち止まって言った。
空っぽの家に、ひどく頑丈な閂か。王はいちばん賢い人だと言われているが、こういうことにそれほど賢いのなら、こんなにぐっすり眠ってはいまい。
そう言うと、それは鍵のかかった扉を通り抜けて消えた。翌朝、王が調べさせると、その寝床に寝ていたのは、あの客だった。客は、デンマークのグレーニングに住んだ「争い好き」と呼ばれるソルズの息子だと名のった。人並み外れて大きく、たくましい男だった。
黄金の留め金
ユールの少し前、王に仕える赤のウルヴが帰ってきて、王に金の腕輪を贈った。フニトゥズという名で、七か所で溶接され、どの部分も色が違っていた。腕輪は館じゅうを回され、誰もがこれほど見事な金は見たことがないと言った。
けれども客のテーブルまで来ると、ゲストはそれを眺めて手のひらにのせたまま返し、何も言わずに仲間と冗談を交わしていた。新参者だけがこの腕輪を何とも思わないようだ、と人々は言った。
やがてゲストは、もっとすぐれた金の品を見せた。それは鞍の帯の留め金だった。ゲストはこう語った。
あるとき、竜殺しシグルズがどこかの集まりへ馬で向かう途中、泥の水たまりに乗り入れた。すると馬グラニが激しく跳ね上がり、鞍の帯がはじけて、留め金が地面に落ちた。泥の中で光っているのを見つけて拾い、シグルズに手渡すと、シグルズはわたしにくれると言った。それがこの金だ。
ゲストはさらに、そのときグラニの尾から抜き取ったという毛の房を見せた。その長さは七エルもあった。
英雄たちの話
王に問われるまま、ゲストは自分が見てきたことを語った。
シグムンドの息子シグルズが、噂どおり美しく勇ましい王子なのかを自分の目で確かめたくて、南のフランク人の国へ行き、ヒャールプレク王の宮廷でシグルズに仕えたこと(物語「シグルズの成長と馬グラニ」)。シグルズがレギンに学び、フンディングの息子たちと戦い、ギューキの娘グズルーンと結婚したこと。ギューキの息子たちとともに戦に出たこと。やがてデンマークの自分の土地に帰り、シグルズとギューキの息子たちの死を聞いたこと。
王は言った。おまえの話はとても面白い。
さらに王が、訪ねた王たちのうちで、どの宮廷がいちばんよかったかと尋ねると、ゲストは答えた。いちばん楽しかったのは、シグルズとギューキの息子たちのもとでした。ロズブロクの息子たちは、家来に最も自由な暮らしを許しました。ウプサラのエイリーク王の宮廷が最も豊かで、美髪王ハーラルは家来に課す務めが誰より厳しかった。サクソン人の国のフレズヴェール王のもとにもいて、そこで仮の洗礼を受けました。キリスト教が厳しく守られていて、そうしなければとどまれなかったからです。
若いノルンの言葉
そしてゲストは言った。では、なぜわたしがノルナゲスト――ノルンの客――と呼ばれるのかをお話ししましょう。
わたしはグレーニングの父の家で育った。父は裕福で、立派な暮らしをしていた。そのころ、国じゅうを回って人の行く末を予言する賢い女たちがいた。人々は女たちを家に招いてもてなし、帰りには贈り物をした。父もそうして、わたしの運命を予言してもらった。
予言の時、わたしは揺りかごに寝ていて、頭の上には二本の蝋燭が燃えていた。女たちは、わたしが幸運に恵まれ、一族の誰よりも、国の有力者の息子たちよりも偉大な者になると予言した。そして、すべてはそのとおりになった。
けれども、いちばん若いノルンは、ほかの二人ほど重んじられず、予言のことで相談もされないと思っていた。そのうえ、その場にいた乱暴な群衆が彼女を席から押しのけ、彼女は床に倒れた。若いノルンはひどく腹を立て、大きな声で、そんなよいことを予言するのはやめろと叫んだ。わたしは定める。この子は、そばで燃えているあの蝋燭が燃えつきるまでしか生きない、と。
すると、いちばん年上の女がその蝋燭を取って火を消し、母に預けた。この子の命の最後の日までは、決して火をつけてはならない、と言って。わたしが大人になると、母はその蝋燭をわたしに渡した。それをいまも持っている。
洗礼と蝋燭の火
王は、なぜいまわたしのところへ来たのかと尋ねた。ゲストは答えた。あなたのもとへ来れば幸運が得られると思ったのです。善く賢い人々が、あなたをたいそうほめていると聞きましたから。
王は、いま聖なる洗礼を受けるかと尋ね、ゲストは、お勧めならそうしますと答えた。こうしてゲストは洗礼を受け、王の家来の一人となった。よいキリスト教徒になって王の定めに忠実に従い、皆に好かれた。
ある日、王はゲストに尋ねた。もし選べるなら、あとどれほど生きたいか。
ゲストは答えた。神の御心なら、ほんのわずかで結構です。
王は言った。いまおまえの蝋燭に火をつけたらどうなる。
ゲストは竪琴の枠の中から蝋燭を取り出した。王が火をつけさせると、蝋燭はすぐに燃えはじめた。王はゲストに、おまえはいくつなのかと尋ねた。ゲストは答えた。わたしはいま、三百歳になります。
ゲストは横たわり、油を塗ってほしいと頼んだ。王がそのとおりにさせ、終わったときには、蝋燭はほとんど燃え残っていなかった。ゲストの最期が近いことは、誰の目にも明らかだった。そして炎が揺らめいて消えると同時に、ゲストの魂は去っていった。人々は皆、その死に驚いた。
王は、ゲストの語った話を大いに重んじ、その一生について語ったことは、すべて本当だったと考えた。
出典について:本稿は『ノルナゲストの話』(ノルナゲスト・サーットル)に基づく再話です(英訳は N・カーショー訳『Stories and Ballads of the Far Past』、1921年)。この話は、キリスト教の王オーラヴ・トリュッグヴァソンの宮廷を舞台に、古い英雄たちの時代を生きた男が思い出を語る枠物語になっています。ゲストが語る英雄譚には古い詩も多く含まれますが、本稿では詩の部分を要約しました。オーラヴ王は実在のノルウェー王ですが、三百年を生きた男の話は伝説であり、史実として読むことはできません。「ロズブロクの息子たち」はラグナル・ロズブロクの息子たちを指します。
出典・資料
- 伝説サガ集『Stories and Ballads of the Far Past』 — Nornagest / Sörli / Hromund Greipsson / Hervör and Heithrek。個別箇所は制作時確定
