ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
ニョルズ
Njörðr
ヴァン神族の国で育ち、和平の人質としてアース神族のもとへ来た神。風の行方を治め、海と火を鎮める。フレイとフレイヤの父で、巨人スィアチの娘スカジを妻にした。
風と海の神
ニョルズは天のノーアトゥーンに住む。『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」によれば、ニョルズは風の行方を治め、海と火を鎮める。航海と狩りのときには彼に祈るべきで、たいへん豊かなので、人々に土地や財をたっぷり与えることもできるという。「詩語法」はニョルズを「ヴァン神族の神」「フレイとフレイヤの父」「富を授ける神」などと言い換える。
ヴァン神族からの人質
ニョルズはアース神族の生まれではない。ヴァン神族の国で育ったが、ヴァン神族は彼を人質として神々に渡し、引き換えにヘーニルを人質として受け取った。こうしてニョルズは、神々とヴァン神族のあいだの和解のしるしとなった。『古エッダ』の「ヴァフスルーズニルの言葉」も、ヴァン神族の国で賢い者たちがニョルズを作って神々に人質として与えたこと、世界の滅びのときには彼がヴァン神族のもとへ帰ることをうたう。
ニョルズはノーアトゥーンで、のちに息子フレイと娘フレイヤをもうけた。「ロキの口論」では、人質の身をロキにあざけられたニョルズが、自分は誰にも憎まれず、神々の第一に数えられる息子を得たと答える。
スカジとの結婚
巨人スィアチが神々に殺されたあと、その娘スカジが父の仇を討ちにアースガルズへやって来た。神々が示した和解の条件の一つは、足だけを見て夫を選ぶことだった。スカジはとても美しい足を見て、バルドルだろうと思って選んだが、それはノーアトゥーンのニョルズだった。
スカジは父の住まいだった山のスリュムヘイムに住みたがり、ニョルズは海の近くにいたがった。そこで九夜をスリュムヘイムで、次の九夜をノーアトゥーンで過ごすと取り決めた。山から戻ったニョルズは、白鳥の歌のあとでは狼の遠吠えがいやだったとうたい、スカジは、海辺では水鳥の声で眠れなかったとうたった。そののちスカジは山へ帰り、スリュムヘイムに住んだ。
夫選びの話は「詩語法」に、結婚後の取り決めは「ギュルヴィたぶらかし」にあり、二つの書物は互いの話を参照していない。
登場する物語
- アース神族とヴァン神族――最初の戦いと和平世界で最初の戦いは、二つの神の一族のあいだで起こった。焼かれても生き返る女、破られた神々の壁、人質の交換、そして和平のしるしの甕。資料ごとに少しずつ残された戦いと和解の物語を読む。
- フレイとゲルズ――使者スキールニルの求婚世界を見渡す高座から巨人の娘ゲルズを見たフレイは、恋に苦しむ。馬と剣を借りた従者スキールニルは炎を越えて巨人の館へ行き、黄金の林檎と腕輪、剣の脅し、そして恐ろしい呪いの言葉で、ついに会う約束を取りつける。
- グリームニルの試練と王の結末オーディンとフリッグの賭けから、名を明かさない旅人グリームニルは王ゲイルロズに捕らえられ、二つの火のあいだで八夜を過ごす。一杯の角杯をくれた王子にだけ報い、神々と世界の秘密を語り終えたとき、客は自分の本当の名を告げる。
- ロキの口論――エーギルの宴の騒動海の巨人エーギルの館の宴に、追い出されたロキが戻ってくる。席を求めたロキは、神々と女神たちに次々と悪口を浴びせ、最後に現れたトールの槌の脅しの前で、ようやく館を去る。『古エッダ』の「ロキの口論」。
- オーディンとヴァフスルーズニルの知恵比べ名を偽って巨人の館を訪れたオーディンは、首を賭けた問答に挑む。世界の始まりから神々の滅びのあとまでを問い合った末、最後の一問で巨人は客の正体を悟る。
- スカジとニョルズ――山と海の暮らし父スィアチの仇を討とうと武装してアースガルズへ来た女巨人スカジは、足だけを見て夫を選ぶことになる。選んだのは海の神ニョルズ。九夜ずつ山と海で暮らそうとした二人の、かみ合わない住まいの物語。
関連する事典項目
出典
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
- 原題
- Gylfaginning
- 該当箇所
- 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」
- 原題
- Skáldskaparmál
- 該当箇所
- 作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため一部本文を確認。グングニルと神器の製作はこの版の第35章。フロールヴ・クラキは第43章。個別記事の照合は別に記録する。
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。
