NORSE · STORY
グンナルとホグニの最期
アトリの城で、黄金の引き渡しを拒んだグンナルとホグニは大軍と戦い、グズルーンも鎖帷子を着て兄弟と並んで剣を振るう。捕らえられたホグニは心臓を切り出されながら笑い、グンナルは黄金のありかをライン川にゆだね、蛇の囲いで竪琴を弾いて死ぬ。
黄金を渡せ
ギューキの息子たちは、アトリ王の館へ馬を進めた(物語「アトリとの結婚と兄弟への招き」)。アトリは軍勢を戦いの隊形に並べていた。兄弟たちとのあいだには、壁が一つあった。
アトリは言った。よく来た。正当にわたしのものである豊かな黄金を渡せ。かつてシグルズが持っていて、いまは正当にグズルーンのものである富を。
グンナルは答えた。その富をおまえが手に入れることは決してない。戦うつもりなら、わたしたちが命を落とす前に、ここで力ある者たちと戦うことになるぞ。おまえは偉い人のようにこの宴を開いたが、どうやら鷲と狼に餌をやるつもりらしいな。
アトリは言った。わたしはずっと前から、おまえたちの命を奪って黄金の主になろうと考えていた。おまえたちが義理の親族のなかで最もすぐれた人を欺いた、あの恥ずべき行いに報いるためだ。いまこそ、彼の仇を討ってやる。
ホグニは言った。その考えを長いあいだ温めていても、実行しなければ何の役にも立たない。
こうして激しい戦いが始まった。初めは矢の射ち合いだった。
剣を取ったグズルーン
戦いの知らせがグズルーンのもとに届いた。グズルーンは激しく怒り、外套を脱ぎ捨てて走り出ると、やって来た兄弟たちに挨拶し、口づけをして、あらゆる愛情を示した。それが、彼らのあいだで交わされた最後の挨拶だった。
グズルーンは言った。あなたがたがここへ来ないように手を打ったつもりだったのに。でも、定められた運命には誰も逆らえない。いまからでも和平を求めることはできないのですか。
兄弟たちは、きっぱりと、厳しく、それを拒んだ。
兄弟たちが不利になっていくのを見ると、グズルーンは大きな勇気を奮い起こした。鎖帷子を身につけ、剣を手に取り、兄弟と並んで戦った。そして、最も勇敢な男たちと同じほど前まで進み出た。これほど見事な戦いぶりを見たことはないと、誰もが口をそろえて言った。
正午までの戦い
人々は次々に倒れた。兄弟たちの戦いぶりは、ほかの誰よりもすさまじかった。戦いは正午まで長く続いた。グンナルとホグニはアトリの軍勢を突き抜け、野は血で赤く染まったという。ホグニの息子たちも勇ましく攻めかかった。
アトリ王は言った。わたしたちの軍勢は立派で大きく、力ある勇士もいる。それなのに多くが倒れた。勇士のうち十九人が殺され、生き残ったのはわずか六人だ。
そこで戦いがいったん途切れた。
アトリ王は言った。わたしたちは四人兄弟だったが、いまはわたし一人が残った。大きな縁組をして、運が開けたと思っていた。美しく賢く、心の高い妻を得た。けれども、その知恵を少しも喜べない。二人のあいだにはほとんど平和がないのだから。おまえたちはわたしの親族を大勢殺し、国も富も奪い、何よりの悲しみとして、わたしの妹まで殺したのだ。
ホグニは言った。なぜそんなことをぺらぺらとしゃべる。先に和を破ったのはおまえのほうだ。おまえはわたしの親族の女を連れていき、飢えさせて死なせ、殺して、その財を奪った。王のすることではない。自分の災いを長々と話すおまえを、わたしは笑ってやる。おまえが不幸に落ちることを、神々に感謝しよう。
捕らえられた兄弟
アトリ王は家来たちを激しく攻めかからせた。けれどもギューキの息子たちの攻めがあまりに激しかったので、アトリ王は館の中へ退いた。戦いは館の中に移り、それはどんな戦いよりも激しいものになった。
多くの者が死んだ。最後には兄弟の家来はすべて倒れ、二人だけが立っていた。それでもなお、多くの者が二人の武器の前にヘルの国へ送られた。
やがて大勢がグンナル王に襲いかかり、ついに捕らえて縛めをかけた。ホグニはそのあとも、誰よりも勇ましく雄々しく戦った。アトリ王の勇士のなかでも最も強い二十人を倒し、多くの者を広間の真ん中で燃える火の中へ突き落とした。これほどの男は二度と見られまいと、誰もが思った。けれども最後には大勢に押し倒され、捕らえられた。
二つの心臓
アトリ王は言った。あれの前に、なんと多くの者が倒れたことか。あれの心臓を切り出せ。それを死に方にしてやれ。
ホグニは言った。好きにするがいい。おまえが何をしようと、わたしは喜んで耐えよう。わたしの心が恐れていないことを見せてやる。
アトリ王の相談役が言った。もっとよい考えがある。奴隷のヒャッリを連れてきて、ホグニのかわりにしよう。あの奴隷は、長く生きるほど値打ちが下がる。
ヒャッリはそれを聞いて大声で叫び、隠れられそうな場所へ逃げまわった。王たちの争いと荒々しい振る舞いのせいで、自分はひどい目にあう、豚の番をしていた楽しい暮らしから死へ引きずられていくとは、なんと不運な日だ、と叫んだ。人々は彼を捕まえて刃を向けたが、ヒャッリは切っ先が触れる前から泣きわめいた。
するとホグニは、窮地に陥った人がめったに口にしないようなことを言った。奴隷の命乞いをしたのである。この叫び声には耐えられない、それくらいなら、自分の遊びを最後までやりとげるほうがましだ、と。こうして奴隷は、そのときは命を助けられた。グンナルとホグニは二人とも縛めにつながれた。
アトリ王はグンナル王に、命が惜しければ黄金のありかを話せと言った。
グンナルは答えた。いや、まず兄弟ホグニの血まみれの心臓を見せてもらおう。
そこで人々はまた奴隷を捕まえ、その心臓を切り出してグンナル王のもとへ運んだ。グンナルは言った。ここにあるのは、臆病なヒャッリの心臓だ。誇り高いホグニの心臓には少しも似ていない。いまこれほど震えているが、胸の中にあったときは、この倍も震えていたことだろう。
笑ったホグニ
そこで人々は、アトリにせきたてられて、ホグニに取りかかり、その心臓を切り出した。けれどもホグニの雄々しさはあまりに強く、その苦しみに耐えながら笑っていた。皆はその勇気に驚き、そのことはいつまでも語り継がれている。
人々はその心臓をグンナルに見せた。グンナルは言った。
これは力強いホグニの心臓だ。臆病なヒャッリの心臓には少しも似ていない。いまもほとんど震えていないが、胸の中にあったときは、もっと震えなかった。アトリよ、わたしたちが死ぬように、おまえも死ぬだろう。見よ、黄金のありかを知っているのは、もうわたし一人だ。ホグニが話すことはもうない。二人とも生きているあいだは、わたしの心はあれこれと迷った。だがいま、わたしは自分で決めた。黄金がフン族の手に渡るくらいなら、ライン川に治めさせよう。
アトリ王は、この捕らわれ者を連れていけと言い、人々はそうした。
グズルーンは家来たちを呼んで、アトリのところへ行き、言った。あなたがわたしとの約束を守らなかったように、いまからずっと、あなたに災いがありますように。
蛇の囲いの竪琴
グンナルは、両手を固く縛られたまま、蛇の囲いに投げこまれた。中には多くの蛇がいた。
グズルーンはグンナルに竪琴を送った。グンナルは足の指で竪琴をかき鳴らした。その腕前はみごとで、手で弾いてもこれほどの演奏を聞いたことはないと思うほどだった。その力強い調べに、蛇たちはついに皆眠ってしまった。
けれども、一匹だけ眠らないまむしがいた。大きく、恐ろしい姿をしたそのまむしはグンナルに這い寄り、毒牙を突き立てて、とうとう心臓まで刺した。こうしてグンナルは、大胆不敵に、その生涯を終えた。
出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第37〜38章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。同じ出来事は『古エッダ』の「アトリの歌」と「アトリの言葉」にもうたわれ、資料によって細部が異なりますが、今回はこの二つの詩とは照合していません。ホグニが言う「飢えさせて死なせた親族の女」が誰を指すのかは、サガに説明がありません。
出典・資料
- 『ヴォルスンガ・サガ』 — I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
