ENCYCLOPEDIA · 北欧神話

スィアチ

Þjazi

鷲の姿になって女神イズンと林檎をさらった巨人。取り戻されたイズンを追ってアースガルズに飛びこみ、神々に殺された。娘はスカジ。

鷲になった巨人

『散文のエッダ』「詩語法」によれば、オーディン、ロキ、ヘーニルの三人が旅の途中で牛を煮ようとしたとき、何度火を崩しても肉が煮えなかった。頭上の樫の木にいた大きな鷲が、火の力を奪ったのは自分だと言い、腹いっぱい食べさせれば煮えると申し出た。その鷲がスィアチである。

鷲が牛の両腿と両肩をまっさきに取ると、怒ったロキが棒で突いた。棒は鷲の背に、ロキの手は棒にくっついて離れず、ロキは空を引きずられた。鷲は、イズンを林檎とともにアースガルズの外へ連れ出すと誓わせてからロキを放した。約束の日、ロキに誘い出されたイズンを、鷲の羽衣を着たスィアチがつかみ、自分の住まいスリュムヘイムへ連れ去った。

アースガルズの門の内で

イズンを失った神々は老いはじめ、ロキを責めた。ロキはフレイヤの鷹の羽衣を借りて巨人の国へ飛び、スィアチが海へ出ているあいだにイズンを木の実の姿に変えて連れ帰った。気づいたスィアチは鷲の羽衣で追ったが、神々はアースガルズの城壁の下に鉋くずを積んで火をつけた。鷲は止まれずに羽に火がつき、神々はアース神族の門の内側でスィアチを殺した。その殺害はとても名高いという。

のちに娘のスカジが父の仇を討ちに来て、神々と和解した。そのときオーディンは、償いとしてスィアチの両目を天に投げ上げ、二つの星にした。

一族と詩の伝え

スィアチの父はオルヴァルディ(アルヴァルディとも)といい、黄金に富んでいた。息子のスィアチ、イジ、ガングは、それぞれ口に入るだけの黄金を同じ回数ずつ取って遺産を分けた。そのため詩では、黄金を「この巨人たちの口の言葉」のように言い換えるという。スィアチの住まいは山のスリュムヘイムで、『古エッダ』の「グリームニルの言葉」もそこをスィアチが住んだ所、いまはスカジが住む所とうたう。

「ハールバルズの歌」では、トールがスィアチを倒してその目を天へ投げ上げたと語る。ベロウズの訳注は、スノッリの散文ではこの手柄が特にトールのものとはされていないと記している。「ロキの口論」では、ロキが、スィアチを捕らえた戦いでは自分が真っ先にいたと言い、スカジに言い返される。

登場する物語

関連する事典項目

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出典

  1. スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
    原題
    Gylfaginning
    該当箇所
    作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
    参照訳
    Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)

    2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。

  2. スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」
    原題
    Skáldskaparmál
    該当箇所
    作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
    参照訳
    Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)

    2026-10-28、収録計画のため一部本文を確認。グングニルと神器の製作はこの版の第35章。フロールヴ・クラキは第43章。個別記事の照合は別に記録する。

  3. 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
    原題
    The Poetic Edda
    該当箇所
    作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
    参照訳
    Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)

    2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。