NORSE · STORY
スヴァンヒルドとハムディル、ソルリ
シグルズの娘スヴァンヒルドは、ヨルムンレク王に嫁ぐ途中、相談役ビッキの讒言で王子とともに殺される。母グズルーンにせき立てられた異父兄弟ハムディルとソルリは、鉄の通らない鎧で復讐に向かうが、途中で殺した弟エルプの言葉が、二人の運命を決めた。
ヨルムンレク王の求婚
そのころ、ヨルムンレクという力ある王がいた。息子はランドヴェールといった。王は息子を呼んで言った。相談役のビッキとともに、ヨーナク王のもとへ行ってほしい。そこでは竜殺しシグルズの娘スヴァンヒルドが育てられている(物語「グズルーンの復讐とアトリの死」)。あの娘こそ、この世の太陽の下に住む最も美しい乙女だと、わたしは確かに知っている。ほかの誰よりも、あの娘を妻にしたい。おまえが行って、わたしのために求婚してくれ。
ランドヴェールは、父上の使いをするのは当然のことです、と答えた。
一行はヨーナク王の館に着き、スヴァンヒルドを見て、その美しさに心を奪われた。ランドヴェールは王に、ヨルムンレク王がスヴァンヒルドを妻にと望んでいる、これほど力ある者に嫁がせることはまたとないと言った。ヨーナク王は、名高い人との名誉ある縁組だと言った。グズルーンは言った。運がいつまでも変わらないと信じるのは、危うい信頼です。
それでも王の後押しもあって、求婚は成った。スヴァンヒルドは立派な供を連れて船に乗り、艫の王子の隣に座った。
ビッキの讒言
ビッキはランドヴェールに言った。あんな年寄りより、あなた自身がこれほど美しい女を妻にするほうが、どれほどよくふさわしいことか。
その言葉は王子の心にかなった。王子はやさしい言葉でスヴァンヒルドに話しかけ、彼女も同じように答えた。
陸に着いて王のもとへ行くと、ビッキは言った。王よ、言いにくいことですが、知っておかねばならないことが起こりました。あなたが欺かれたのです。王子がスヴァンヒルドの愛をすっかり得てしまいました。この行いを、罰せずにおいてはなりません。
ビッキはそれまでにも王に多くの悪い助言をしてきたが、どれよりもこれが深く王の心を刺した。王は怒りを抑えきれず、ランドヴェールを捕らえて絞首台に吊るせと叫んだ。
ランドヴェールは絞首台へ引かれていく途中、自分の鷹を取ってその羽をむしり、父に見せるよう頼んだ。それを見た王は言った。わたしの名誉が、この鷹の羽のように失われてしまったと、息子は思っているのだ。そして息子を絞首台から下ろすよう命じた。けれども、そのあいだにビッキは思いどおりにしていて、ランドヴェールはもう死んでいた。
スヴァンヒルドの死
ビッキはさらに言った。あなたが仕返しをすべき相手は、スヴァンヒルドをおいてほかにありません。恥ずべき死を与えなさい。王は、その助言どおりにしようと言った。
スヴァンヒルドは城の門に縛りつけられ、馬が追い立てられて、彼女を踏みにじろうとした。ところが彼女が目を大きく見開くと、馬たちは踏みつけることができなかった。それを見たビッキは、彼女の頭に袋をかぶせよと命じた。人々はそのとおりにし、スヴァンヒルドは命を落とした。
母のせき立て
スヴァンヒルドが殺されたと聞くと、グズルーンは息子たちに言った。ヨルムンレクがおまえたちの妹を殺し、恥ずべきやり方で馬の足で踏みにじったというのに、なぜのんびりと楽しげに座っているのか。おまえたちにはグンナルやホグニのような心がない。あの人たちなら、きっと親族の仇を討っただろうに。
ハムディルは答えた。母上は、グンナルとホグニがシグルズを殺し、あなたがその血に染まったとき、二人をほめはしなかった。兄弟の仇を、自分の息子を殺して返したのもひどいやり方だった。それでも、ヨルムンレク王を討つのは悪いことではない。そこまでせき立てられては、もうその言葉に耐えられない。
グズルーンは笑いながら歩きまわり、大きな杯で二人に飲ませ、大きくすぐれた鎖帷子と、あらゆる戦の装いを与えた。
ハムディルは言った。これが最後の別れです。やがてわたしたちの知らせが届くでしょう。そのときは、わたしたちとスヴァンヒルドのために、弔いの酒を飲んでください。
グズルーンの嘆き
グズルーンは悲しみにふくれた胸で部屋へ入り、言った。
わたしは三人の男に嫁いだ。最初は竜殺しシグルズ。あの人は裏切られて殺された。それがあらゆる悲しみのなかで最も大きな悲しみだった。次にアトリ王に嫁がされ、あの人を憎むあまり、悲しみの激しさのなかで、あの人とわたしの子を殺した。それから海に身を投げたが、波に陸へ打ち上げられ、この王に与えられた。スヴァンヒルドを多くの富とともに国の外へ嫁がせたが、シグルズの次に大きな悲しみとして、彼女は馬の足に踏まれて殺された。けれども、いちばんむごく、いちばん醜い悲しみは、グンナルが蛇の囲いに投げこまれたこと、いちばんつらかったのは、ホグニの心臓が切り出されたことだった。
ああ、シグルズがわたしを迎えに来て、いっしょに行けたらいいのに。ここにはもう、わたしを慰める息子も娘も残っていない。シグルズ、覚えていないの。二人で一つの寝床に入ったとき、死者の住まいからでも、わたしに会いに来ると言ったことを。
手が手を助けるように
グズルーンは、どんな鋼も通らないように息子たちの武具を整えていた。そして、石やほかの重いものに手を出してはならない、そうすれば身に害が及ぶと言い含めた。
旅の途中、二人は弟のエルプに出会い、どうやって自分たちを助けるつもりかと尋ねた。エルプは答えた。手が手を助けるように、足が足を助けるように。
二人はそれを少しも取り合わず、その場でエルプを殺してしまった。
そのまま進んでいくと、まもなくハムディルがつまずき、手をついて体を支えた。そして言った。エルプの言ったことは本当だった。手が支えてくれなかったら、いま倒れていた。
少しあとでソルリがつまずいたが、足を踏みかえて立ち直り、言った。両足で支えなかったら、いま倒れていた。
二人は、弟エルプにひどいことをしたと言い合った。
石の雨
二人はヨルムンレク王の館に着くと、ただちに王に襲いかかった。ハムディルが王の両手を、ソルリが両足を切り落とした。ハムディルは言った。エルプが生きていたら、首も落ちていただろう。途中で殺してしまった弟、わたしたちが自分の行いの過ちを知ったときには遅すぎた弟が。
けれどもこのとき、二人は母の言いつけに背くことになった。石を相手にしなければならなくなったのである。人々が二人に襲いかかった。二人は勇ましく身を守り、多くの者を倒した。鉄は二人に通らなかった。
そこへ、年老いた姿の片目の男がやって来て言った。この者たちを殺せないとは、おまえたちは賢くない。
王は言った。できるなら、その手立てを教えてくれ。
男は言った。石で打ち殺せ。
そのとおりにされた。石が四方から激しく飛んできて、二人の命はそこで終わった。こうして、ギューキ一族の根も幹も、すべて絶えたのである。
出典について:本稿は『ヴォルスンガ・サガ』第41〜43章に基づく再話です(英訳はエイリークル・マグヌーソンとウィリアム・モリスの訳、H・H・スパーリング編、1888年)。英訳の注によれば、最後に現れる片目の男はオーディンで、サガは始まりと同じようにオーディンで物語を終えます。また注によれば、『散文のエッダ』では、狩りから帰った王が布を洗っているスヴァンヒルドを見て、すべての災いの元だと思い、家来とともに馬で踏み殺したとされています。サガの結びの一文(ギューキ一族が絶えた)は、英訳者が『散文のエッダ』から補ったものです。同じ物語は『古エッダ』の「グズルーンの扇動」と「ハムディルの歌」にもうたわれますが、今回はこの二つの詩とは照合していません。
出典・資料
- 『ヴォルスンガ・サガ』 — I–XLIII。1888年版の章立てを起点とする
