ENCYCLOPEDIA · 北欧神話
ブラギ
Bragi
知恵と、とりわけ弁舌と詩作の技で名高いアース神族の神。妻は林檎を守る女神イズン。『散文のエッダ』「詩語法」では、海の神エーギルに神々の物語を語って聞かせる。
詩の神
ブラギは知恵で名高く、なかでも言葉の流暢さと言葉を操る技にすぐれた神である。『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」は、ブラギが詩作について最もよく知っていて、彼の名から詩作が「ブラグ」と呼ばれ、人並みすぐれて弁の立つ男や女が「ブラグの人」と呼ばれると語る。妻はイズンで、神々が老いたときに食べて若返る林檎を、とねりこの箱に守っている。
「詩語法」は、ブラギを「イズンの夫」「最初に詩を作った者」「長いひげの神」「オーディンの息子」と言い換える。『古エッダ』の「グリームニルの言葉」は、すぐれたものを並べるなかで「詩人のなかではブラギ」とうたう。
エーギルに語る
「詩語法」は、海の神エーギルがアースガルズを訪れた宴から始まる。エーギルの隣の席に座ったブラギは、アース神族に起こった多くの出来事を語って聞かせた。イズンと林檎がさらわれた話、スカジの夫選び、詩の蜜酒の由来、トールとフルングニルやゲイルロズとの戦いなどは、この書物では、エーギルの問いに答えるブラギの語りとして伝えられる。
「ロキの口論」のブラギ
『古エッダ』の「ロキの口論」では、海の神の館の宴に入ってきたロキに、ブラギが、神々はおまえに席を設けない、と告げる。ロキが神々に乾杯するなかでブラギだけを除くと、ブラギは自分の宝から馬と剣と腕輪を出すから騒ぎを鎮めよと言うが、ロキは彼を臆病者とののしる。
なお、英雄詩「フンディング殺しのヘルギの歌」には、ホグニの息子ブラギという同じ名の人物が登場するが、この項目のブラギとは別人である。
登場する物語
- イズンと林檎――老いていく神々鷲に捕らえられたロキは、放してもらう代わりに、林檎を守る女神イズンを神々の国の外へ誘い出すと誓う。イズンが連れ去られると、神々はたちまち老いはじめた。
- ロキの口論――エーギルの宴の騒動海の巨人エーギルの館の宴に、追い出されたロキが戻ってくる。席を求めたロキは、神々と女神たちに次々と悪口を浴びせ、最後に現れたトールの槌の脅しの前で、ようやく館を去る。『古エッダ』の「ロキの口論」。
- 詩の蜜酒――クヴァシルの血とオーディンの獲物飲む者を詩人や学者にする蜜酒は、殺された賢者クヴァシルの血から作られた。小人から巨人へ、巨人からオーディンへ――殺害と取引と策略を経て、蜜酒は神々のもとへ運ばれる。
- スカジとニョルズ――山と海の暮らし父スィアチの仇を討とうと武装してアースガルズへ来た女巨人スカジは、足だけを見て夫を選ぶことになる。選んだのは海の神ニョルズ。九夜ずつ山と海で暮らそうとした二人の、かみ合わない住まいの物語。
- トールとゲイルロズの館鷹の姿で捕まったロキは、命と引きかえに、トールを槌も持たせず巨人ゲイルロズの館へ連れていくと誓う。女巨人グリーズに道具を借りたトールは、増水する川を渡り、持ち上がる椅子と灼けた鉄の棒をしのぐ。
- トールとフルングニルの決闘――頭に残った砥石馬比べからアースガルズへ入りこみ、酔って大言を吐いた巨人フルングニル。トールは初めての一騎打ちに臨み、槌で巨人を倒すが、砕けた砥石のかけらは今もトールの頭に刺さったままだという。
関連する事典項目
出典
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」
- 原題
- Gylfaginning
- 該当箇所
- 作品全体。記事ごとの章節は制作記録で特定する
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため目次と一部本文を確認。全記事の本文照合済みを意味しない。既存の章別出典レコードは変更しない。
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」
- 原題
- Skáldskaparmál
- 該当箇所
- 作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
- 参照訳
- Arthur Gilchrist Brodeur, The Prose Edda (1916)
2026-10-28、収録計画のため一部本文を確認。グングニルと神器の製作はこの版の第35章。フロールヴ・クラキは第43章。個別記事の照合は別に記録する。
- 『古エッダ』Bellows訳・神々の歌と英雄詩
- 原題
- The Poetic Edda
- 該当箇所
- 作品別の詩名・節を本文制作時に特定する
- 参照訳
- Henry Adams Bellows, The Poetic Edda (1923)
2026-10-28、収録目次を確認。詩ごとの本文確認は未実施。既存の採用詩の章別レコードは維持する。
