NORSE · STORY

フロームンド・グレイプスソンの冒険

棍棒で不死身の略奪者を倒した若者フロームンドは、魔術師の王スラーインの塚に一人で降り、魔剣ミストルテインを奪う。王の妹スヴァンフヴィートの助けを退けた凍った湖の戦いで兄弟を失い、剣も湖の底へ沈むが、物語は思いがけない形で続いていく。

山羊のひげの棍棒

デンマークのガルザルを、オーラヴという名高い王が治めていた。王の国を守っていたのは、カーリとエルヌルヴという勇ましい兄弟だった。その地方に、グレイプという裕福な農夫がいて、妻グンレズとのあいだに九人の息子がいた。なかでもフロームンドは最もすぐれ、恐れというものを知らなかった。目は青く、髪は明るい色で、肩幅が広く、背が高くて力強かった。

王のもとにはビルドとヴォリという二人の家来もいた。邪悪で、ずる賢い者たちだったが、王は二人を重んじていた。

あるとき、王の船団はノルウェーの沿岸で、六隻の軍船と、一隻の豪華な竜頭船に出くわした。船の主はフレングヴィズという悪党だった。三十三年間、夏も冬も略奪を続け、六十の戦いに一度も負けたことがないと豪語した。どんな刃も彼を傷つけることができなかった。

翌日の戦いで、カーリはおおぜいの敵を倒したが、フレングヴィズは王の船に跳び移ってカーリを剣で刺し通した。カーリは、さらば王よ、わたしはオーディンの客になる、と叫んだ。弟のエルヌルヴもフレングヴィズの槍に刺されて死んだ。

そのとき、王の家来のなかにいたフロームンドが、手に棍棒を持ち、長い灰色の山羊のひげを顔につけ、頭巾をかぶって戦いに飛びこんだ。王の旗を取り戻すと、棍棒で悪党どもを次々に倒した。フロームンドの一撃でフレングヴィズの頭はゆがみ、二撃めで頭蓋が割れ、三撃めで死んだ。残った者たちは王に降参した。

フロームンドは船を調べ、舳先で降参しないと言うフレングヴィズの兄弟、豪胆なヘルギを見つけたが、その傷の手当てをさせた。

スラーインの塚

その後、王の船団はヘブリディーズの島々で略奪をした。牛を奪われて嘆く男にフロームンドがわけを尋ねると、男はマーニと名のり、こう言った。それより、塚を破って死者の宝を奪うほうが、ずっと名誉になる。昔、スラーインという魔術にたけた大きな狂戦士がいた。ヴァルランドを征服して王になり、剣と鎧と大きな宝とともに塚に入った。だが、そこへ行こうとする者はいない。

フロームンドはマーニに礼を言い、金を与え、牛も返してやった。そして教えられたとおり六日間南へ航海すると、塚が見えた。

六日がかりで塚を掘り進めると、地下への落とし戸が見つかった。中には、黄金をきらきらとまとった、黒く巨大な魔物が玉座に座り、大声で吠えながら火を吹いていた。誰が入るかとフロームンドが問うと、ヴォリは、命を捨てたがる者はいない、あのトロルは皆を殺すだろうと言った。そこでフロームンドが、夜、綱を伝ってひとりで降りていった。

魔物との組み打ち

フロームンドはたくさんの宝を集めて綱の先に結びつけ、柱に掛かっていた一振りの剣を下ろして腰に帯びた。そして玉座へ歩み寄り、自分の金や剣や首飾りを奪われても座っているのかとあざけった。

魔物スラーインは言った。昔はわたしがいつもまっ先に戦ったものだ。死んではいても、宝は奪わせない。武器のない者に剣で向かっても名誉にはならない。むしろ組み打ちで力を試そう。

フロームンドは剣を投げ捨て、自分の力を頼みにした。スラーインは頭上の大釜を下ろし、火を吹きあおった。その両手は曲がり、爪は鉤爪のようだった。

日が暮れて、塚の中は暗くなった。二人は激しく組み合い、瓦礫や石がはがれ飛んだ。魔物は片膝をついて言った。おまえは強い。ずいぶん勇ましい男だ。

するとスラーインはトロルに姿を変え、塚の中は恐ろしい悪臭で満ちた。トロルはフロームンドの首のうしろに爪を立て、肉を骨から腰まで引き裂いた。それでも二人は長いあいだ組み合い、ついにフロームンドが足をかけてトロルを倒した。

スラーインは言った。おまえは策略でわたしを負かし、わたしの剣を奪った。剣に頼りすぎるものではない。わが良き剣ミストルテインよ、おまえがわたしを傷つけるとは思わなかった。

フロームンドが、その剣で一騎打ちに何人を殺したかと問うと、スラーインは百四十四人だと答えた。フロームンドは言った。おまえは長いあいだ人々の呪いだった。いますぐ殺すのはよい行いだ。そして魔物の首を切り落とし、火で灰になるまで焼いた。

フロームンドは塚で得た三つの宝――腕輪と首飾りと剣ミストルテイン――を自分のものにし、ほかの金は皆に分け与えた。

中傷と王の妹

フロームンドは名高くなり、気前がよく、皆に好かれた。ある日、フロームンドがフロークという男に金の腕輪を贈ると、ヴォリは夜にフロークを殺して腕輪を盗んだ。

王には二人の妹がいて、そのうちスヴァンフヴィートは、スウェーデンからハーロガランドまでに並ぶ者のない女だった。フロームンドはスヴァンフヴィートと親しくなった。スヴァンフヴィートは、ヴォリとビルドが王にあなたの悪口を言っていると教えたが、フロームンドは卑しい者など恐れないと言って用心しなかった。中傷はひどくなり、フロームンドと兄弟たちは王のもとを去って父の家へ帰った。

スヴァンフヴィートは王に言った。わたしたちに最も大きな栄誉をもたらしたフロームンドを追い出し、名誉も徳も気にしない二人を置いておくなんて。たった一人で塚に入ったのは、あの人だけだったのに。

凍った湖の戦い

やがてスウェーデンから、二人のハッディングという王が、豪胆なヘルギとともにやって来て、凍ったヴェーネル湖の上での戦いを挑んだ。王はフロームンドたちを呼んだが、フロームンドは、ビルドとヴォリという立派な者たちがいるではないかと断った。

スヴァンフヴィートはフロームンドの家を訪ね、王を助けてほしいと頼み、帯のついた盾を贈った。この帯を身につけているかぎり、何もあなたを傷つけられない、と。フロームンドは礼を言い、八人の兄弟とともに出陣した。

戦いは氷の上で始まった。ビルドはすぐに殺され、ヴォリの姿はどこにもなかった。フロームンドは前の夜に悪い夢を見たので、この日は戦わないと言った。兄弟たちは、王を助けに来たのに戦わないのは恥だと言って戦いに出た。

そこに一人の魔女が白鳥の姿で現れ、歌いながら強い呪文をかけたので、オーラヴ王の兵は誰も身を守ろうとしなくなった。白鳥はグレイプの息子たちの上を高らかに歌いながら飛んだ。その名はカーラといった。そのときヘルギが八人の兄弟に出会い、一人残らず殺した。

白鳥の脚と腹の傷

そこへフロームンドが戦いに加わった。ヘルギは言った。兄弟たちを殺しているあいだ、おまえは離れていたな。おまえは手に娘の靴下留めを巻いている。その盾を置け。それを持っているかぎり傷つけられない。おまえはあの娘に頼っているのだろう。

フロームンドはそのあざけりに耐えられず、盾を投げ捨てた。

ヘルギはいつも勝ってきたが、それは魔術によるもので、その恋人が白鳥の姿のカーラだった。ヘルギが剣を頭上高く振り上げたとき、剣は白鳥の脚を切り落とした。カーラは死んで落ちた。ヘルギの剣は柄まで地面に突き刺さったが、その切っ先がフロームンドの腹を引き裂いた。

フロームンドはミストルテインでヘルギの頭を打ち、兜も頭蓋も肩まで割った。剣は一部が欠けた。それからフロームンドは小刀で、腹の傷からはみ出たものを押しこみ、紐で傷の縁を縫い合わせ、衣服をきつく巻きつけて、なおも勇ましく戦った。真夜中まで戦いつづけると、ハッディングの軍の生き残りは逃げ去った。

氷の上に、一人の男が立っていた。この湖を魔術で凍らせた者にちがいない――それはヴォリだった。フロームンドがミストルテインで斬りかかると、ヴォリは息を吹きかけて剣を手から吹き飛ばした。剣は氷の穴に落ちて、湖の底へ沈んだ。ヴォリは笑った。ミストルテインをなくしたおまえは、もう終わりだ。フロームンドは言った。おまえのほうが先に死ぬ。そしてヴォリにつかみかかって持ち上げ、氷にたたきつけて首の骨を折った。

フロームンドは氷の上に座りこんで言った。娘の言うことを聞かなかったので、十四の傷を負い、八人の兄弟は殺され、良き剣ミストルテインは湖に落ちた。剣を失ったことは、何をもってしても償えない。

カマスの腹の剣

王の妹たちが呼ばれ、スヴァンフヴィートがフロームンドの傷を縫って介抱し、ハガルという男のもとで治療させた。ハガルの妻は腕がよく、夫婦は魔術の心得があった。ある日、漁師のハガルがカマスを一匹釣り上げ、家で腹を開くと、その中からフロームンドの剣ミストルテインが出てきた。フロームンドは喜んで剣の柄に口づけし、農夫にたっぷり褒美を与えた。

ハッディング王の家来ブリンドが、フロームンドが生きていて農夫の家にかくまわれていると王に告げ、探しに来た。妻は初めフロームンドを大釜の下に隠し、ブリンドたちが引き返してくると、こんどは女の服を着せて手臼をひかせた。男たちは臼をひく娘のまわりをかぎまわったが、娘ににらまれて、見つけられずに帰った。

その冬、ブリンドはいくつもの夢を見て王に語った。王はどれも都合よく解いたが、首に鉄の輪がはめられた夢だけは、おまえは吊るされ、わたしたち二人の終わりになると解いた。

王の最期と婚礼

オーラヴ王は軍を集めてスウェーデンへ攻めこみ、フロームンドもついていった。不意を突かれたハッディング王は寝床で布団をかぶった。フロームンドが何度斬りつけても、剣は向きを変えて平らに当たり、王は傷つかなかった。そこでフロームンドは棍棒を取り、王を打ち殺した。ブリンドは捕らえられて吊るされ、夢はそのとおりになった。

オーラヴ王はスヴァンフヴィートをフロームンドに嫁がせた。二人は互いを深く愛し、息子と娘に恵まれた。その血筋から、多くの王と名高い勇士が出たという。


出典について:本稿は『フロームンド・グレイプスソンのサガ』第I〜X章に基づく再話です(英訳は N・カーショー訳『Stories and Ballads of the Far Past』、1921年)。伝説サガの物語であり、王や地名を史実として読むことはできません。スラーインの塚の剣ミストルテイン(ヤドリギ)は、『ヘルヴォルとヘイズレクのサガ』でアルングリームの息子の一人が持つ剣と同じ名です。

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