NORSE · STORY
フロージ王と魔法の石臼グロッティ
望むものを何でもひき出す石臼グロッティを手に入れたフロージ王は、巨人の娘フェニャとメニャに休みなく黄金と平和をひかせる。怒った二人は、王を滅ぼす軍勢をひき出した。石臼はやがて海の底へ沈み、海が塩辛くなったわけを語る。
フロージの平和
オーディンの息子の一人に、スキョルドという者がいた。スキョルドゥングの一族は彼から出たという。スキョルドはいまデンマークと呼ばれる国に住んで治めていた。その息子フリズレイヴが国を継ぎ、フリズレイヴの息子フロージが、そのあとを継いだ。
フロージは北の国々で最も力ある王だったので、デンマークの言葉が話される地では、平和は彼の名をとって「フロージの平和」と呼ばれた。その時代には、誰も他人を傷つけなかった。父や兄弟を殺した者に、縛られていようといまいと面と向かって出会っても、手を出す者はいなかった。盗人も強盗もいなかったので、金の腕輪が一つ、ヤラングルの荒野に長いあいだ落ちたままになっていたという。
二人の女奴隷と石臼
あるとき、フロージ王はスウェーデンのフィョルニル王の宴に招かれ、そこで二人の女奴隷を買った。フェニャとメニャという、体が大きく力の強い女たちだった。
そのころデンマークで、二つの大きな石臼が見つかった。あまりに大きくて、誰も回すことができなかった。この臼には、回す者が望むものを何でもひき出す力があった。臼はグロッティと呼ばれた。フロージ王にこの臼を贈ったのは、ヘンギキョプトという者だった。
フロージ王は女奴隷たちを臼のところへ連れていき、黄金をひけと命じた。二人はそのとおりにした。初めに二人は、フロージのために黄金と、平和と、幸福をひき出した。けれども王は、郭公が鳴きやんでいるあいだか、歌を一つ歌うあいだしか、二人に休みも眠りも許さなかった。
グロッティの歌
二人はそのとき、「グロッティの歌」と呼ばれる歌を歌ったという。歌はこう始まる。
いまわたしたちは王の館に来た。先を見通す二人、フェニャとメニャ。フリズレイヴの子フロージのもとで、力ある乙女たちは、女奴隷として扱われている。
二人は臼を回しながら歌った。フロージのために富をひこう。幸運の臼で、たっぷりと財をひこう。富の上に座り、羽毛の上に眠り、幸せのなかで目覚めますように。ここでは誰も他人を傷つけず、悪をたくらまず、たとえ兄弟の仇が縛られているのを見つけても、鋭い剣で殺したりしないように。
けれども王は、郭公が黙っているあいだ、歌一つのあいだより長く眠るなと言うだけだった。
二人は歌った。フロージよ、乙女たちを買ったとき、あなたは賢くなかった。力と見た目で選んだけれど、わたしたちの一族のことは尋ねなかった。フルングニルは強かったし、その父も強かった。けれどもスィアチはもっと強かった。イジとアウルニルはわたしたちの身内。わたしたちは山の巨人の兄弟から生まれたのだ。
わたしたちは九つの冬のあいだ、地の下でいっしょに遊んで育った。巨大な岩を動かし、巨人の住まいの上へ転がし、大地を揺るがせた。それからスウェーデンへ行き、熊を狩り、盾を砕き、灰色の鎖帷子の軍勢のなかを進んだ。王を倒し、別の王を立てた。
いま、わたしたちは王の館に来て、慈悲もなく女奴隷として扱われている。足の裏は泥にまみれ、上からは寒さが襲う。わたしたちは平和をひく臼を回している。フロージの館は暗い。
目覚めよ、フロージ。わたしたちの歌と古い物語を聞く気があるなら。城の東に火が燃えているのが見える。戦の知らせが目を覚まし、警告の烽火が上がる。軍勢がすばやくここへ来て、フロージ王の頭上の館に火を放つだろう。ユルサの息子、ハールヴダンの身内の者が、フロージに仇を討ちに来る。
乙女たちは巨人の狂おしい力で臼を回し、力を試した。臼の柱は震え、粉の箱ははじけ、重い石臼はまっぷたつに割れた。山の巨人の頑丈な乙女は言った。フロージよ、わたしたちはひいた。もうすぐひくのをやめよう。女たちは粉ひきに、あまりに長く働きすぎた。
海が塩辛いわけ
散文はこう語る。二人は歌い終える前に、フロージに対する軍勢をひき出した。その夜、ミューシングという海の王がやって来てフロージを殺し、多くの財を奪った。こうしてフロージの平和は終わった。
ミューシングは、グロッティとフェニャとメニャを船に乗せて連れていき、二人に塩をひけと命じた。真夜中になると、二人はミューシングに、もう塩に飽きないかと尋ねた。ミューシングは、もっとひけと言った。
二人がまたしばらくひいたところで、船は沈んでしまった。それ以来、海には渦ができていて、水が石臼の穴から落ちこんでいる。そのときから、海は塩辛くなったのだという。
出典について:本稿は『散文のエッダ』「詩語法」第42章に基づく再話です(英訳は A・G・ブロデュール訳、1916年)。原典では、詩で黄金を「フロージの粉」と言い換える理由を説明する話として語られ、章の中に「グロッティの歌」の英訳が引かれています。散文ではフロージを殺すのは海の王ミューシングですが、歌では仇を討つのは「ユルサの息子でハールヴダンの身内の者」とされ、歌は石臼が割れるところで終わります。「グロッティの歌」は H・A・ベロウズ訳の『古エッダ』には収められていないため、「詩語法」に引かれた英訳だけを用いました。スノッリはフロージの平和をキリストが生まれた時代のこととしていますが、これは伝説の時代設定です。
出典・資料
- スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』「詩語法」 — 作品全体。章番号はBrodeur訳に従い、他版の番号と混同しない
